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『アイコン的組織論 超一流のコンサルタントたちが説く「能力の好循環」』

ためし読み / ザビエ・ベカルト, フィリス・ヨンク, フェボ・ウィベンス, ヤン・ラース, 稲垣みどり

2017年10月25日発売予定の『アイコン的組織論 超一流のコンサルタントたちが説く「能力の好循環」』(ザビエ・ベカルト、フィリス・ヨンク、ヤン・ラース、フェボ・ウィベンス:著、稲垣みどり:訳)の「イントロダクション」を無料公開いたします。

どのジャンルにおいても他の追随を許さない「アイコン」=象徴的な存在のブランド、組織、企業が存在する。一時の成功にとどまらず歴史的に、絶対的な地位を築いています。

この本では、音楽、レストラン、スポーツなど様々な分野で圧倒的に秀でた組織・チーム・コミュニティ・団体である14のアイコン的組織にインタビューをもとに調査・研究し、共通する厳密な人選、完全な能力主義、分散型リーダーシップ、限りない向上心など、長期に渡って成功し続ける要因=「能力の循環」について解き明かしています。

 

イントロダクション

 

アイコン[ icon 崇拝の的]となるには、 2つのことさえできればいい。

 

A あなたのいる分野で、称賛されるトップの存在になること

B 想像を絶する期間、その状態を保つこと

 

とはいえ、ほとんどの組織はそこまで到達しない。それでも、そこにいきつく少数の精鋭もいて、50年、100年以上と長期にわたってその座を保っている。どうすれば、そのようなことができるのだろうか。

本書のテーマはアイコンだ。東方正教会にある聖像[ icon イコン]のことではなく、ひときわ優れた組織のことだ。名門オーケストラやミシュランで星を獲得しているレストラン、世界屈指の外科医たち、無敵のスポーツ・チーム、卓越した企業を取り上げる。どの組織も並外れたものをつくっ たり、特別なことをしたりすることを目指し、それを何十年も続けている。その結果、誰もが認めるアイコン的[象徴的]な存在となっているのだ。

なかでも興味深く、この本を執筆するきっかけともなったのが、アムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)だ。RCOは2013年に創立125周年を迎えた。創立からわずか数年で名を知られるようになり、以来ゆるぎないトップレベルの地位を保っている。このような偉業を成し遂げるには、何か理由があるはずだ。そう考えた私たちは、その秘密を探ることにした。なぜ長年にわたり、トップでいられるのか。この疑問に対する熱意を受け、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、私たちの詳しい調査に協力してくれた。さらには、この楽団の事務局長、ヤン・ラースが自ら調査に参加し、著者チームに加わることになった。当時ラースは、事務局長に就任してから、数年経ったところだった。オランダやベルギーで様々な文化団体を率いた後、光栄にもこのオーケストラの一員になり、RCOがなぜここまで特別な存在なのか、それを是非とも知りたいと考えていた。 私たちの調査でほどなく明らかになったのは、RCOには成長を持続し、非凡な結果を生み続ける能力の好循環が働いているということだった。

さらに他の主要なオーケストラや企業を調査した結果、すべての組織で同じような能力の好循環が働いていることがわかった。この循環は非常にシンプルでありながら、組織のアイコンとしての存続を支えている。すなわち、卓越したパフォーマンスが最高の「人材」を惹き寄せ、素晴らしい働きをする「チーム」ができ、その人たちが目標を持って比類なき結果を「時間」を経ても生み出し続けているのだ。こうして好循環は、自動的に持続していく。条件が整い、この循環を維持できると、時が満ちればその組織はアイコン的な存在となる。そしてアイコン的な能力の循環というのは、計り知れないほど強固なものになり得る。好循環の要素の中身については組織によって独自の解釈がなされているものの、要素自体は同じだ。実際に、私たちがインタビューを行ったベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーのひとりは、私たちが示 した能力循環を、自分たちのオーケストラをモデルにしているものだと思ったという。

本書は科学的なレポートの形をとっていない。アイコン的な組織についてきちんと伝えるためにも、内部のメンバーとの対話を通じて得た鮮明な刺激を、なるべくそのまま記述している。読者を洞察に満ちた組織内部への旅にいざない、能力の循環とは何か、どう実践されているのかを見ていきたい。私たちはこの本を、経営者や管理職者など、リーダーシップを求められる人たちを念頭に置いて書いた。ご自身の組織に、インスピレーショ ンを伝え、生かしていただけると幸いだ。だが、同時に世界有数のオーケストラやレストラン、スポーツ・チームや企業などの舞台裏を覗いてみたいという人なら誰にでも、興味深く読んでもらえるものと思う。何十年も、あるいは 100年以上も続いている組織について書くのに、 ちょうどいいタイミングというのはおそらくないだろう。

私たちは何年も前から本書のアイデアをあたため、断続的な調査も行ってきた。 ある日ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートのあとで、 たまたまヤンとザビエ・ベカルトが会った。そして話しているうちに、オーケストラと、例えばザビエがよく見知っている経営コンサルティング会社とでは、想像以上に似ている点が多いことに気づいた。厳密な人選、 完全な能力主義、分散型リーダーシップ、常に期待を上回る成果を求める向上心などで、そのすべてが成功の循環にかかわるものだった。また2人が知っている他の卓越した組織とも、それは共通していた。こうし て、アイコン的な組織をテーマにした本のアイデアが誕生した。アイコン的な組織についてじっくり理解を深めたいという共通の情熱を持ってできたのが、本書の著者チームだ。A.T.カーニーやベイン・ アンド・カンパニー、ベントハーストでの長年にわたる戦略コンサルティングの経験から、私たちは様々な組織と仕事をする機会に恵まれた。また特定の状況を深く理解し、そこから核心となるものを取り出し、広範囲に役立てたいという強い思いを持っていた。例えばフィリス・ヨンクとフェボ・ウィベンスは、それぞれA.T.カーニーとベイン・アンド・ カンパニーで戦略的な概念を展開し、文章にしていた経験を持つ。 私たちがトップの組織にいる人たちにインタビューをし、著者チームで長い議論をし、14の組織に対する調査をまとめたのが本書だ。

アイコン的な組織のメンバーと意見を交わすことで、私たちは個人的にも大いに刺激を受け、多くの新たな見識を得た。それを、皆さんと分かち合いたいと思う。

 

ザビエ・ベカルト、フィリス・ ヨンク、 ヤン・ラース、フェボ・ウィベンス

 

(このつづきは、本編でお楽しみ下さい)
※掲載しているすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。

アイコン的組織論
超一流のコンサルタントたちが説く「能力の好循環」

ザビエ・ベカルト、フィリス・ヨンク、ヤン・ラース、フェボ・ウィベンス=著|稲垣みどり=訳

発売日:2017年10月25日

四六判・並製|268頁|本体:2,000円+税|ISBN 978-4-8459-1635-1


プロフィール
ザビエ・ベカルトXavier Bekaret

設立して間もない戦略コンサルティング会社、ベントハーストの共同創立者。それ以前はドイツとベルギーでコンサルティング業に従事したあと、A・T・カーニー、ベイン・アンド・カンパニーに勤務。

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プロフィール
フィリス・ヨンクGillis Jonk

ビジネス革新に情熱を持つ戦略コンサルタント。石油掘削装置の鉱山技師としてキャリアをスタートしたあと、戦略コンサルタントとしてベントハースト、A・T・カーニーに勤務。新規事業立ち上げの戦略アドバイザーとしても活躍。共著書に『RebuildingtheCorporate Genome』(ワイリー社、2002)及び『TheFutureofStrategy』(マグロウヒル社、2014)がある。

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プロフィール
フェボ・ウィベンスPhebo Wibbens

ペンシルベニア大学ウォートン校にて戦略についての博士研究を行っている。戦略コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーに8年勤務し、うち後半4年間は『Repeatabilityリピータビリティ―再現可能な不朽のビジネスモデル』(クリス・ズック、ジェームズ・アレン著、火浦俊彦、奥野慎太郎訳、プレジデント社)、『Repeatability』(HBRPress、2012) のリサーチ・チーム・リーダーを務めた。

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プロフィール
ヤン・ラースJan Raes

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の奏者兼マネージング・ディレクター。それ以前はベルギーやオランダでロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ゲルギエフ・フェスティバル など、複数の文化団体を率いてきた。

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プロフィール
稲垣みどりいながき・みどり

翻訳者。上智大学文学部英文学科卒業。幼少時の大半をヨーロッパで過ごす。日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て外資系金融会社に勤務。主な訳書に『ビッグデータ時代襲来 顧客ロイヤルティ戦略はこう変わる』(アルファポリス)、『大統領の疑惑』(キノブックス)、『世界最高の学級経営』(東洋館出版社)、共訳書に『呼び出された男─スウェーデン・ミステリー傑作集』(早川書房)などがある。

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