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2018.09.27

『物理学的ストーリー創作入門 売れる物語に働く6 つの力』イントロダクション

ためし読み / シカ・マッケンジー, ラリー・ブルックス

どうして自分の作品がアマチュアの域を出ないのか疑問に思っている方もいるでしょう。
実はプロとアマチュアの差は「物語の物理」ともいうべき「6つの力」の生かし方にあるのです。
本書『物理学的ストーリー創作入門 売れる物語に働く6 つの力』では、物語に働く「6つの力」について解説しています。
ストーリーに働く物理の力は、人によって違うということはありません。
「どんなにアイデアやコンセプトがすごくても、物理的にだめなら失敗する」と著者はいいます。
引力や日光や気温のように決して無視することのできない「6つの力」を最大限に生かし、読者の記憶に焼きつく「売れる」ストーリーを書きましょう。
今回のためし読みでは本書の「イントロダクション」を公開します。

 

イントロダクション

僕は作家や講師、ブロガーとして活動を始めてずいぶん経つが、「ストーリーの作り方なら全部知っている」と言う人に会ったことはない。僕も作り方は知らない。

謙遜しているわけではない。僕はもともとそんなタイプではないけれど、強く自己主張をして誤解されることもあったから、慎むようになった(抑えきれない情熱がある、というのが本当のところだ)。

ストーリーテリングを知れば知るほど、売れるものを書くことの複雑さや奥深さ、選択肢の幅広さに気づく。ストーリーはまるで人間のようだ。身体の作りは同じでも、同じ人は二人としていない。同じ物語でも書き方は人それぞれだ。一人ひとりの個性や癖、好みは違う。カウンセリングには個別の対応が必要だ。

その一方で、あらゆる場合に適用されるストーリーの原則と物理が存在する。

物理的な力は万物に及ぶ。河川の流れや原子力のように、ストーリー作りに生かせる。度外視してもいいが、あまりいい結果にはならない。

投げたボールは落ちる。僕らはグローブやヘルメットを着けてキャッチする。似たような力学は人間関係にも働いている。僕らは誰かを愛したり、我慢をしたりする。気力を出したり無気力になったりする。子供を育て、弱者を守ることもある。不安のあまり臆病になる時もあれば、勇気を奮い起こす時もある。こうした力は人間関係や社会の原則を表し、結果を生む。かなり一貫性のある力学に従って僕らは生きているわけだ。何かを書く時、それはたいてい、心や社会のことになる。だったらいま一度、新たな目でこうした力学を見直すべきではないだろうか。

僕は文章がもつ力を物理として捉えるのが好きだ。軽視も無視もしたくない。結果が露わに出るからだ。それは「ストーリーがうまくできない」ということだから恐ろしい。逆に、うまく使えば望む結果が引き出せる。ストーリーの物理は物語を動かすエンジンであり、翼である。業界に打って出るなら滑空モードはそぐわない。飛べずに墜落するのがおちだ。

行き先を決めずに飛ぼうとするのは無謀だ。

何も決めずにストーリーを書こうとする人もいる。行き詰まり、疲れ切って頭を抱える人もいる。
この本ではそれを解決したい。「ルールなんてない」という思い込みを解消し、高度な理解に導きたい。それはちょっと複雑だ。まず「ルール」と「原則」の違いを説かなくてはならないからである。
どんな名前で呼んだとしても、ストーリーに作用する力学そのものは変わらず存在する。

その力学を使いこなせば、まぐれの当たりを期待しなくて済むだろう。回り道もしなくて済む。

その域にたどり着くまでは、ぼんやりした認識しかできない。「いいアイデアがひらめいた」と思った瞬間からストーリーの物理は動き始めるが、自分で意識できないことが多い。セミナーや本で学んだことも実践で生かせず、「頑張って書くしかないな」と言って書くしかない。

頑張って書いたものが成功する可能性はゼロではないが、きわめて低い。噓だと思うなら書店の倉庫を見るといい(近所に書店があればの話だが)。あなたが「あ、これ、聞いたことがある」という本の約千倍もの数の本がここ数年で書かれている。書店の棚に並ぶことさえ叶わなかった本が膨大にあるということだ。理由はきわめて単純だ。「ストーリーのアイデアが平凡」「コンセプトがつまらない」「独自性がない」「競争力がない」。文章力があっても売れないものは売れない。鶏の糞みたいな扱いだ。

あてもなく書くことのリスクを知り、流れに沿って書く決意をすれば、執筆は一気に加速する。

僕は一冊目のハウツー本『工学的ストーリー創作入門―売れる物語を書くために必要な6つの要素』で物語創作のツールを紹介した。二冊目にあたる本書では、そのツールが扱う力について説明する。第22節でツールを再び紹介し、本書の内容と関連づけていく。また、第23節と第24節では近年の大ベストセラー二作品を分析する。どちらも映画化されているので、小説が未読の人は映画版を見てくださってもかまわない。原作小説を真摯に、新鮮に描き直している。

本書ではストーリーの物理の働きをたっぷり熱く語るので、講義を聞くような気持ちでお読みいただけたら幸いだ。僕の口調は饒舌で、カフェインの摂り過ぎかと自分でも思うことがある。どうかご勘弁をいただきたいが、本書のように突っ込んだ内容は他にないと自負している。

ストーリーテリングの技術については、一度聞いただけでは飲み込みにくいものがある。だから、たとえ話も必要だと思うし、「そんなの当たり前じゃないか」と言われるような事も言葉にしなくてはならない。僕はこの本を、純金でできた氷山を色々な角度から見るようなイメージで書いた。どこかの時点で大きな気づきを得ていただければと願っている。ストーリーの物理の力はあらゆる場に存在する。あなたの目の前にも、あるかもしれない。それに気づいて招き入れた時、最高の物語も見つかるはずだ。

ストーリーの探求を始めよう。ストーリーの物理の力があなたの女神になりますように。

 

(このつづきは、本編でお楽しみ下さい)
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物理学的ストーリー創作入門 売れる物語に働く6 つの力
ラリー・ブルックス=著 シカ・マッケンジー=訳
発売日:2018年09月25日
A5判|272頁|本体:2,000円+税|ISBN 978-4-8459-1806-5

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