世界的に著名なSF 作家にしてアンソロジスト、ジェフ・ヴァンダミアが放つ唯一無二の小説執筆ビジュアル・ガイド『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』。遊び心と実用性を併せ持った小説執筆の総合ガイドがついに刊行となりました。
ここでは、本書の中身をお見せしながら、『ワンダーブック』が一体どのような本なのか、その特徴のいくつかをご紹介いたします。
特徴その①
豊富なイラストや図表
まず、冒頭部分「この本の特徴」で、著者のジェフ・ヴァンダミアは本書についてこのように説明しています。
『ワンダーブック』は2つの点で、よくある執筆ガイド本とは異なる。まず、イラストが文章にかわって説明をしたり、文章を補ったりすることが多い。30人を超えるアーティストが作品を提供してくれたけど、図表はどれも、ぼくのスケッチとコンセプトを基にジェレミー・ザーフォスが描いてくれた。この本には、いままでのどんな執筆ガイド本よりもわかりやすくて刺激的な(実用面でもヴィジュアル面でも)挿絵が載っている。イラストがいつでも文章のかわりになるわけじゃないけど、キーコンセプトを伝えたり、複雑なことを噛み砕いて単純にしたりするうえで、とても有用だ。きみのクリエイティビティも魅了できるといいんだけど。
『ワンダーブック』には、下記のようなオリジナル図表とイラストが実に300以上掲載されています。
特徴その②
ファンタジー・ホラー・SFなどのジャンルに最適
そして、上記に続く文章で、第二の特徴を挙げています。
ジャンルを問わず新人・中堅作家の助けになるといっても、『ワンダーブック』のデフォルトの設定は写実主義(リアリズム)ではなくファンタジーにしてある。たいていの執筆ガイド本は写実小説をデフォルトにしていて、ファンタジーはストーリーテリングのほかのジャンルから切りはなされている感じだ。もし、きみがファンタジー、ホラー、SF、マジックリアリズム、不条理主義や超現実主義(シュルレアリスム)といったジャンルで書いているなら、この本を読んで、ふるさとに帰ったような気分になってもらえると思う。
特徴その③
ユニークなガイド・キャラクター
『ワンダーブック』には情報を与え、花を添え、楽しませる、いろんなガイド・キャラクターが登場します。ミスター・オッド、リトル・エイリアン、ひねくれデビル、なんでもお見通しの目玉ペン、そして、ウェブ・ナビゲーターなどです。
例えば、「なんでもお見通しの目玉ペン」というキャラクターは、本書でこのような役割を担っています。
「わたくしはリトル・エイリアンたちと共にやって来たが、彼らと違い、使命はただひとつ。あなたの注意力が衰え、刺激を欲していると気づいたときは抜きうちライティング・チャレンジを実施する」
「なんでもお見通しの目玉ペン」はときおりページに現れて、読者にいろんな課題を出します。
あなたの長編小説が、巨大イカが船を襲っているぐらい強烈なシーンからはじまるとしても、何を強調し、何を強調しないかを決めなくてはならない。このジョン・コールタートの絵を用い、「クラーケン(訳注:伝説上の海の怪物)の夜明けの襲撃」という長編小説のオープニングを考えなさい。主人公がだれか、描かれたシーンがどういう状況か、いつ、どこで、なぜ怪物が襲うのかを知る必要がある。考えうるかぎりの、重点が違うオープニングをリストになさい。たとえば、怪物が見つかるところからはじめるのか、襲撃中からか、襲撃の数分まえからか、それとも……? わたしたちがはじめに、2番目に、3番目に見るものは何か。それぞれのオープニングがなぜ効果的なのか、説明なさい。そして、この章を読み終えたら、リストに戻ってきなさい。効果に対する見かたは変わったか。もし変わったなら、どのように?
特徴その④
有名文学作品を素材にした物語構造分析
『ワンダーブック』では、数々の名作文学作品について言及しています。例えば、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『アメリカーナ』の物語構造分析や、ウラジーミル・ナボコフの短編『レオナルド』の設定やプロットを使って「自分ヴァージョン」の『レオナルド』を書くエクササイズなどが収録されています。物語を書くだけではなく、既存の文学作品を分析・分解するという視点をもつことができます。
特徴その⑤
世界的大作家のアドバイスやエッセイを収録
本書には、ジョージ・R・R・マーティン(『ゲーム・オブ・スローンズ』原作者)、アーシュラ・K・ル=グウィン(『ゲド戦記』)、ニール・ゲイマン(『アメリカン・ゴッズ』)等々、世界を熱狂させる大作家たちのエッセイや実践的アドバイスを多数収録しています。
『ワンダーブック』が多くの読者から支持されているのは、イラストがあるからというだけではありません。本書を読めば、物語執筆に必要な基礎的な知識や技術を網羅的に学ぶことができます。目次を見ていただければ納得いただけるはずです。
以上、簡単に本書の特徴のいくつかをご紹介いたしました。本書『ワンダーブック』とともにストーリーテリングをマスターするための冒険に乗り出りましょう!!