ミッドポイントとは? 『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2』 | かみのたね
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2021.01.10

ミッドポイントとは? 『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2』

ためし読み / シド・フィールド

ミッドポイント

直感的に、これは正しい、いけると思った。実際の作品でそうなっているか確認しようと思い、その視点から何本か脚本を読み直してみた。

この頃(70年代の終り)脚本のセミナーの題材としてポール・マザースキーの『結婚しない女』をよく使っていたので、そこから検証してみることにした。状況設定は、エリカの幸せな結婚生活の描写である。申し分のない結婚生活を送っていると、エリカは思っている。夫のマーティンとはジョギングをしたり、仕事前に愛し合ったりもする。パート先の画廊では画家のチャーリー(クリフ・ゴーマン)に言い寄られたり、友達とのディナーを楽しんだり、見る限りエリカは幸せで満足そうだ。文句のつけようのない生活である。

ところが始まりから25分後、エリカとマーティンがレストランを出た時、突然マーティンは取り乱して泣き出し、「実は好きな女性がいる。離婚してくれないか」と告白する。これがプロットポイントⅠである。

エリカは第一幕での結婚している女から、第二幕での結婚していない女になる。エリカは、あまりにも突然、新しいライフスタイルに適応しなければならなくなる。これは簡単なことではない。一人でいる寂しさや、娘のことで、悩み苦労し、男を憎むようになって精神科医にもかかる。初対面の男に迫られると、激怒して男をタクシーから放りだしてしまう。

次の場面では、精神科医の女性から、男に対する怒りを克服して、冒険してみたらと勧められる。「もちろん強制はしないけど、私だったら……」
「どうするの?」
「外に出て、男と寝るわね」
この場面が60ページ目である。次のシーンでは、エリカはバーに出かけ、偶然、画家のチャーリーに会い、彼のアパートで一夜を過ごす。ここからソール(アラン・ベイツ)に出会う第二幕の終わりまで、エリカは何人もの男と寝るのだが、関係を続ける気はない。画家のソールとも一夜を共にするが、また会いたいと言うソールに対し、エリカは言う。「試しているところなの……好きじゃない男と寝るのって、どんな感じなのかなって」

60ページの精神科医とのシーンは、第二幕の前半と後半をつないでいる。30ページから60ページまでの前半、エリカは“男を否定”しているが、60ページから90ページまでの後半、一夜限りで“セックスを試してみる”のである。
パラダイムで“表す”とこうなる(図1)

(図1 『結婚しない女』のミッドポイント)

サム・ペキンパーが言っていた“中心的”な出来事とは、この60ページの精神科医とのシーンなのだろうか? 単に私の思い込みやこじつけにすぎなくはないか?

けれどしばらくして、ポール・シュレーダー(『タクシードライバー』、『キャット・ピープル』、『アメリカン・ジゴロ』)が以前言っていたことを思い出した。そういえば、彼は脚本を書いていると60ページあたりで“何か事件が起きる”と言っていた。

ここでも60ページだ。サムの話、ポール・シュレーダーの話、『結婚しない女』の例、三つは見事に重なっているではないか。他の脚本でも同じことが起きていないか? そう思い、教材として使っている脚本『アニー・ホール』、『コンドル』(ロレンツォ・センプル・ジュニア、デイヴィッド・レイフィール)を読み直してみた。『アニー・ホール』では、プロットポイントⅠでアルヴィーとアニーが出会い、第二幕の前半で恋愛関係になり、第二幕の真ん中で同棲することになる。これがミッドポイントではないか? そのあとは、二人の関係が新たなレベルへ発展していく。

『コンドル』のジョセフ・ターナー(ロバート・レッドフォード)は、「読み屋」と呼ばれるCIAの下部組織の一員だが、ある日昼食の買い出しから帰ってくると、同僚がみな射殺されていることを知る。いったい誰が、何のためにこんなことを? 身の安全を確保するため通りに出たターナーだが、どこにいけばいいのか、誰を信じていいのかわからない。第二幕の真ん中で、ターナーはキャシー(フェイ・ダナウェイ)を人質に取る。これがミッドポイントだ。そこから二人の絆が結ばれていく。

パラダイムで表すと、こうなる(図2)

(図2 『コンドル』のミッドポイント)

 

ミッドポイントが第二幕の前半と後半をつなぐ

この視点から脚本を分析すればするほど、第二幕の真ん中で前半と後半をつなぐ重要な事件が起こることに気がついた。

それがミッドポイントである。ミッドポイントは、脚本の60ページあたりで起こる事件、出来事、エピソードであり、第二幕を前半と後半に分けながらも、両者で起きるアクションの橋渡しをするプロットポイントなのである。

ミッドポイントを使って脚本を分析すればするほど、ミッドポイントの重要性や便利さが痛感できた。

そこで私は、脚本のセミナーでもこのミッドポイントを紹介することにした。すると、受講生の作品が驚くほど変化した。第二幕をしっかり把握し、自分でコントロールできるようになった。途中で迷子になることなく、第二幕で自分がどこに向かい、どうやってそこにたどり着けばいいかが、はっきりと理解できるようになった。

以来、世界中でセミナーを行なっているが、ミッドポイントを第二幕の真ん中において構成するよう指導すると、必ずうまくいき、第二幕が効果的で楽に書けるようになる。毎回それを痛感する。ミッドポイントが他の作品にも当てはまるか、検証してみよう。

『ボーン・スプレマシー』では、ミッドポイントでジェイソンがパメラ・ランディに対面する。ここでジェイソンは、はじめて自分が誰に追われているのかを知る。ここでもミッドポイントは前後のアクションをつなぎ、さらにストーリーを進展させる役割を果たしている。『キング・コング』(ピーター・ジャクソン、フィリッパ・ボウエン、フラン・ウォルシュ)はどうだろう? 第一幕で状況設定がなされて旅が始まり、プロットポイントⅠで孤島に到着する。ここがストーリーの本当の始まりだ。そして第二幕の真ん中、ミッドポイントで私たちは巨大ゴリラに出逢う。パラダイムで表すとこうなる(図3)

(図3 『キング・コング』のミッドポイント)

では、ミッドポイントを決めるにはどうすればいいか。振り返ってみよう。脚本を書く時に最初に決定するのは、結末・発端・プロットポイントⅠ・プロットポイントⅡだ。次にプロットポイントⅠから行動を前進させ、プロットポイントⅡにつなげる事件、出来事、エピソードを考える。それがミッドポイントだ。第二幕の前半と後半の行動をつなぎ、ストーリーを進展させながら、プロットポイントⅡへと導くポイントである。

『タイタニック』を例に取ってみよう。プロットポイントⅠで、ジャック(レオナルド・ディカプリオ)はローズ(ケイト・ウィンスレット)が船から飛び降りようとするのを思いとどまらせる。この出来事をきっかけに二人の関係が始まり、それによって、第二幕前半のアクション――二人はお互いを知るようになり、ローズのフィアンセや母親といった障害に直面する――が引き起こされる。

ローズを救ったお礼に、ジャックは一等船室での夕食に招待される。借り物のタキシードを着たジャックは、食事の席で自分の考え方を披露する。「お互いのことがわかり始める」、が第二幕前半のコンテクスト=サブテーマである。

第二幕は葛藤というドラマ上の文脈で一まとまりになっているが、実は前半と後半にはそれぞれサブテーマが存在する。たとえば『タイタニック』の前半のサブテーマは“お互いを知る”であり、船中の車のバックシートで二人が結ばれるシーンが、そのクライマックスになっている。そしてミッドポイントでは、二人がデッキに
いる時に船が氷山に衝突するという事件が起きる。

ここから第二幕の後半となり、焦点は二人が無事に生き延びられるかに移る。ローズは乗っていた救命ボートから降りて、ジャックのもとに行く。どうせ死ぬのなら愛する人の腕の中で死にたい。ローズとジャックは決して離れない、これが第二幕後半のサブテーマである。

このようにミッドポイントは、第二幕の前半と後半のアクションをつなぐ、とても重要なポイントなのだ(図4)

(図4 『タイタニック』のミッドポイント)

 

ミッドポイントによって主人公は多面的に描かれる

実はもう一つ、ミッドポイントについてわかったことがある。それはミッドポイントが構成上重要であるだけでなく、主人公を多面的に深く描く役目も果たしているということだ。

たとえば『ショーシャンクの空に』では、プロットポイントⅠでアンディ・デュフレーンがレッドに出会い、二人の人間関係が始まる。

やがてアンディは看守に一目置かれる存在になり、図書館での仕事を割り当てられる。もっと本を購入するため、アンディは議会に手紙を書き、援助金を出してもらおうと考える。そして週に一通、時には二通、手紙を書き始める。

その努力が実り、議会から小切手と本類の詰まった段ボールが数箱届く。開けてみると、中には、本の他にモーツアルトのオペラ『フィガロの結婚』のレコードが入っていた。アンディはうれしそうに看守室に入って中から鍵をかけ、レコードをかけて館内放送のスイッチを入れる。美しいアリアが刑務所の隅々まで響き渡る。レッドのナレーション。「歌手が何を歌っているのかさっぱりわからなかった……けれど、それは言葉では表せないほどこの上なく美しかった……歌声は、灰色の刑務所にいる誰一人夢見たことのない、高く遠いところへ舞い上がった。まるで美しい鳥が小さなかごを飛び出し、すべての壁が消えてなくなったかのように……そしてほんの一瞬、ショーシャンクの中の誰もが感じたのだ。自由というものを」

この間に所長や看守は、アンディを止めようとドアを壊して中に入る。レッドのナレーション。「アンディはこの罰として、2週間独房入りになった」。けれどアンディは気にしていなかった。「こんなの楽勝さ」と独房を出たアンディは、笑いながら仲間に言う。そしてこう付け加える。「この世には灰色の石でできていないものもある。それは、私たちの心の中の小さな場所にあるんだ。決して閉じ込めておけないもの……それが希望だ」

レッドはこれに異議を唱える。考え方が違うからだ。「希望は危険だ。人間を狂わせる。ここには希望なんてない。そう思ったほうがいい」。アンディがレコードをかけた一件がミッドポイントであり、これにより主人公の性格がより明確になっているのがわかるだろう。

3つのポイント――プロットポイントⅠ、ミッドポイント、プロットポイントⅡ――は、第二幕をつなぐ構成上のキーポイントだ。作る順序としては、プロットポイントⅠとプロットポイントⅡを先に決めて、そのあとでミッドポイントを決める。全体の順序をもう一度確認しよう。

最初に結末を決める。次に発端(オープニング)、3番目はプロットポイントⅠ、四番目はプロットポイントⅡ。この四点をパラダイムに書き込んだあとで、ミッドポイントを決める。もちろん構成上のポイントは変更できるが、脚本を書き始める前には明確にしておきなさい。

ミッドポイントは第二幕を構成し、一つにまとめ、理解するための重要なポイントなのである。

パラダイムの中にいると、パラダイムは見えないものだ。

 

(このつづきは、本編でお楽しみ下さい)
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素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2

シド・フィールド=著|安藤紘平+加藤正人+小林美也子=監修|菊池淳子=訳

2012年03月10日

A5判|288頁|本体 2,300円+税|ISBN 978-4-8459-1177-6