スウェーデンの脳科学者イサベル・シェーヴァルの『デザインフルネス 脳科学でわかる心地よい生活環境のつくり方』が刊行された。「デザイン×脳科学」という切り口から、「心地よい生活環境のつくり方」を学べる実践的な内容となっている。
今回は本書「第4章 回復」より「行間から得られる健康」をためし読みとして無料公開する。
行間から得られる健康
日曜日になると、お気に入りのアームチェアでやわらかい毛布にくるまり、温かい紅茶と本を片手にくつろぐのが好きです。本を読むことで新しい冒険にいざなわれ、知らなかったことも学びます。ストーリーテリング(本や映画)の研究、読書時に脳内で何が起きているかについての研究は比較的新しいですが、古代ギリシャでもすでに文学や本は魂の癒しだと考えられていました。後の研究でも読書は心を平和にし、リラックスさせてくれるという理論が裏づけられています(自宅に本棚があるメリットについては第2章を参照)。2009年にはイギリスのエクセター大学の研究者が、読書が人間に与える影響を調査しました。論文の共著者で神経心理学者のデイビッド・ルイス博士によると、「毎日6分間続けて読書をすると、ストレスレベルが最大68%も軽減される」というから驚きです。6分間本を読んだ参加者は心拍数が低下し、筋肉の緊張(ストレスが身体に現れた状態)も減りました。読書以外に回復を促す活動は音楽を聴くこと、お茶を飲むこと、散歩をすることでした。
研究によると、ストーリーテリングによって他人を理解しやすくなり、自分自身の人生にも洞察を得られます。感情のシミュレーションが幸福感をもたらすのは、心を落ち着けてくれるホルモン、オキシトシンと関連しているからでしょう。良い本に没頭すれば、回復も早まるようです。
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