スウェーデンの脳科学者イサベル・シェーヴァルの『デザインフルネス 脳科学でわかる心地よい生活環境のつくり方』が刊行された。「デザイン×脳科学」という切り口から、「心地よい生活環境のつくり方」を学べる実践的な内容となっている。
今回は本書「第4章 回復」より「お風呂が最高な理由」をためし読みとして無料公開する。
お風呂が最高な理由
今では回復や休養のためにリトリートやスパに行くのが一般的になりました。リトリート――静けさの中で自分を見つめ直す時間は、昔から宗教の一環ではありましたが、現代では別の形に発展したわけです。
スパの語源は2つ候補があります。ひとつはラテン語で“水からの健康”を意味するsalus per aquamの略語。もうひとつのほうが信ぴょう性があると言われていますが、ベルギーにスパという名前の温泉街があり、ローマの兵士が戦闘後にミネラルを含む温泉で怪我や筋肉の疲労を癒したという説です。
ローマ時代にはお風呂が一般的なレクリエーションで、16世紀には古代ローマで行われていた医療目的の入浴がイギリスの温泉街バースなどで復活しました。バースの“ローマ浴場”は今でも保存され、レクリエーションに利用されています。
水を使った疲労回復や治療はバルネオセラピー(入浴療法)と呼ばれ、何百年も各地の文化に根差してきました。医療目的で使われることもあり、病気や怪我の治癒を促し、休養にもなります。現在ではこの入浴療法の研究が行われており、温浴が炎症を軽減し、血糖値を安定させることをイギリスの研究者が突き止めました。別の研究でも、入浴がオキシトシンの自然な放出を刺激して回復効果をもたらすという説が裏づけられています。オキシトシンのおかげで心が落ち着き、回復の機会が与えられるのです。
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