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2025.07.23

マンガ研究者・小田切博によるアメリカン・ヒーロー・コミックスを解説した連載。第4回目の今回は、戦時下のアメリカにおけるスーパーヒーローの役割に注目し、コミックスがいかに「正義」と「敵」を描いてきたかを、キャプテン・アメリカの誕生とともにたどります。

 

貧弱な坊やの戦争

1939年にヨーロッパではナチス・ドイツによるポーランド侵攻が始まり、1940年代に入ると遠く離れたアメリカ合衆国でも世界大戦への不安が高まっていました。
そんな中、愛国心に駆られた多くの若者たちが軍隊に志願し、その志願兵のひとりが虚弱体質を理由に軍への入隊を拒まれてしまいます。
しかし、面接に立ち会っていた軍人のひとりが彼の熱意に目をつけ、その若者、「スティーブ・ロジャース」に対し、アメリカ軍が秘密裏に開発していた超人血清の被験体にならないかと誘い、正義の戦争への熱い想いをたぎらせるスティーブ青年はこの誘いを快諾しました。

スティーブへの血清投与実験は成功し、貧弱だった彼の体は瞬く間に鋼のような筋肉に包まれていきます。
しかし、実験場に紛れ込んでいたドイツ帝国のスパイの手によって超人血清を開発した教授は暗殺されてしまい、超人血清の開発は頓挫、アメリカ合衆国における超人兵士開発計画は唯一の成功例であるスティーブ青年以外、すべてが失われてしまいました[1]。
そして、彼は自身に備わった超人的な力を活かすため、普段は一般兵スティーブ・ロジャースとして従軍しながら、軍の宣伝や重大作戦においては星条旗をモチーフにしたコスチュームを身にまとう謎の「愛国ヒーロー」キャプテン・アメリカとして、戦場のアメリカ兵たちを鼓舞する存在になったのです[2]。

2011年の映画『キャプテン・アメリカ:ファースト・アベンジャー』[3]、2012年の世界的な『アベンジャーズ』[4]の大ヒット以降、マーベルコミックスを代表するヒーローのひとり、アベンジャーズのリーダーとして国際的に知られるようになったキャプテン・アメリカはこうして誕生したのでした。

 

中欧と中東の現在

このテキストが書かれた2025年には、現在進行形で中欧(旧東欧圏)ウクライナと中東パレスチナで凄惨な戦争が続けられています。

2022年2月24日、ウラジミール・プーチン大統領が率いるロシア連邦がウクライナに宣戦布告、同日ウクライナ東部にある複数の都市に対して攻撃侵攻を開始。
両国は戦争状態に突入しました。
この紛争の背景にはソビエト連邦時代まで遡る民族対立やロシアによるウクライナ東部への政治、軍事的的影響力の維持を巡る両国の対立があり、形式的には東部二地域のウクライナからの独立をロシアが軍事支援するかたちです。[5]
中欧での戦争がはじまった翌年、2023年10月7日、現在パレスチナ自治区を実効支配しているイスラム教政治軍事組織ハマスが、イスラエルに対して大規模な襲撃作戦を決行したことをきっかけにして、イスラエル軍がパレスチナ、ガザ地区への軍事攻撃を開始、以降イスラエル軍はパレスチナへの攻撃を続けています。
パレスチナの問題がウクライナのそれと異なるのは、パレスチナが国際社会の中で政治的な独立を認められた国家ではなく、第二次世界大戦終結後にユダヤ人国家イスラエルが建国されたことによって居住地を追われた人々が住む暫定自治区に過ぎない点でしょう。[6]

これら直近の事例に限らず、人間はこれまでもさまざまな場所、時間で、民族、宗教、経済といったさまざまな動機に基く「戦争」をおこなってきました。
そして、ギリシア悲劇の昔から多くの英雄物語は戦争を題材にしてきたのです。
アメリカにおけるスーパーヒーローコミックスも「戦争」によって産み出されたものとまではいえないでしょうが、戦争によって成長したジャンルだとはいえます。

 

第二次世界大戦とヒーローたち

アメリカにおけるコミックスの主要な発表媒体の一つであるコミックブックは1933年に商品販促用の小冊子として始まったものでした。
この1933年は、アメリカにおいてフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任し、1929年の株価大暴落に端を発する世界恐慌に対する一連の施策「ニューディール政策」を開始した年であると同時に、ドイツではアドルフ・ヒトラーが首相に就任し国民社会主義ドイツ労働者党(いわゆるナチス党)による一党独裁体制へと移行、日本も国際連盟を脱退するという世界が第二次世界大戦へと向かう節目となった年の一つです。

大恐慌時代のただ中に大衆向けの安価な娯楽メディアとして誕生したコミックブックは、こうした閉塞感と不穏さを帯びた社会情勢とともに成長していくことになりました。
ことに1920年代のパルプ小説のヒーローキャラクターたちをモデルとして1930年代末に登場し、1940年代に最初の絶頂期を迎えるスーパーヒーローコミックスは、戦争への不安と熱狂の中で成長していったジャンルだといえるでしょう。

たとえばスーパーマン登場の翌年の1939年にはタイムリーコミックス社から『マーベルコミックス(Marvel Comics)』[7]が創刊されました。
同誌上では、炎を操るアンドロイド、ヒューマントーチ(Human Torch)、海底人と地上人の混血児、ネイモア(Namor)など複数のスーパーヒーローのコミックスが連載され、特にヒューマントーチとネイモアをライバル関係にすることで、1940年には二人が直接対決する、もっとも早いクロスオーバーのひとつ[8]を実現したことで知られています。
炎と水という相反する属性を持つ彼らは、最初から対立関係を意図してつくられたようなのですが、次第に彼らは枢軸国の軍隊を共通の敵とするようになり、協力して連合国側の戦力として第二次世界大戦を戦うようになっていきました。

こうした「戦争協力するヒーローたち」としてもっとも象徴的な存在は1940年に『ペップコミックス(Pep Comics)』1号で登場したシールド[9]をはじめとする「愛国ヒーロー」たちの存在だと思います。
おそらくもっとも有名な「愛国ヒーロー」はキャプテン・アメリカでしょうが、1940年代には他にもコスチュームに赤青白の三色と「スターズ&ストライプス」のアメリカ国旗の意匠をあしらったアメリカ合衆国への「愛国心」や反ファシズムをコンセプトとしたキャラクターたちが次々とデビューしていました。
アンクル・サム、ミニットマン、キャプテン・バトル、スピリット・オブ・’76、ワンダーウーマン、ミス・アメリカ……例を挙げていけばキリがありませんが、彼らアメリカの化身たちの中でも、当時はまだ弱小出版社だったマーベルコミックスの前身であるタイムリーコミックスから刊行された『キャプテン・アメリカ・コミックス(Captain Ameica Comics)』1号(1941)[10]で初登場したキャプテン・アメリカは刊行後、大きな注目を集めた存在でした。というのもこの本のカバーアートには、キャプテン・アメリカがあきらかにアドルフ・ヒトラーを模した人物を殴っている姿が描かれていたためです。

1941年の12月に日本軍による真珠湾攻撃がおこなわれるまで、アメリカ合衆国はヨーロッパでの軍事紛争に介入することに対しては中立の立場を取っており、まだ20代だった同誌のクリエイターコンビ、ジョー・サイモンとジャック・カービ-によるこのイラストやその多分に願望充足的な物語は、露骨な反ナチス・ドイツ姿勢の表明によって、現在でいうところの「炎上」のようなかたちで当時の読者のあいだで賛否両論を呼ぶことになりました。

 

戦時作家会議

ただ、現在の歴史研究においては、このサイモンとカービーによるキャプテン・アメリカのケースのような、コミックスという大衆文化の持つ煽情的な性格は、真珠湾攻撃以降、アメリカにおいてはむしろ積極的にプロパガンダに利用されたことがわかっています。[11]
これはスーパーヒーローコミックスに限ったことではなく、第二次世界大戦へのアメリカ参戦によってジャンル自体が活性化した戦争モノなども含め、コミックブックの誌上にはナチスや日本軍が主要な敵役として恒常的に登場し、アメリカ国内を舞台にしている場合でもスパイや枢軸国シンパが明確に悪として描かれました。
直接戦場に赴いていないスーパーマンも戦時国債を販売する広告に登場したりしていましたし、移民の国であり、多民族社会であるアメリカ合衆国の国民意識を統合し、アメリカと連合国を善、ドイツや日本のような枢軸国を悪と位置づける宣伝のためにコミックスというメディアの単純なわかりやすさが利用されたわけです。

歴史研究者のポール・ハーシュは、第二次世界大戦時のアメリカ国民に対するプロパガンダ機関として、広範な当時の作家、文化人たちが参加した民間広報団体「戦時作家会議(Writer’s War Board)」の活動に注目し、彼らとコミックブック業界の関わりについての調査から「「これが私たちの敵だ」:戦時作家会議とコミックブックにおける人種表象(‘‘This Is Our Enemy’’ : The Writers’ War Board and Representations of Race in Comic Books,1942–1945)」[12]という論文を2014年に発表しています。[13]
戦時作家会議は1942年に米財務省からの要請を受け、劇作家のハワード・リンゼイ、推理小説作家レックス・スタウト、小説家のパール・バック、ポール・ギャリコら20人の文学者、詩人、編集者たちが中心になって設立された文化人による戦争協力ボランティア団体で、1942年度の「年次活動報告書(Writers’ War Board First Annual Report)」によれば、その目的は「直接的または間接的に戦争勝利に役立つ作品を執筆しているアメリカ人作家と米国政府機関との連絡役を務め、作家会議に提出されたアイデアや作品を適切な政府機関に紹介する」というものだとされていました。

このハーシュの論文は、ポール・ギャリコを部会長として組織された戦時作家会議コミックス部会が実際に当時のコミックス出版社と協力してつくりあげたコミックス作品をいくつか紹介し、主にその関与によって戦時作家会議(とその後援者であったアメリカ政府)がコミックブックを利用してアメリカ国内においてどのような「人種的偏見」を喧伝しようとしたのかを論じたものです。

 

「これが私たちの敵だ」

ハーシュ論文の中で第二次世界大戦末期における具体的な戦時作家会議の関与があった中核的な事例として紹介されているのが、論文のタイトルにも引かれている、1945年にオール・アメリカン・パブリケーション(DCコミックスの前身のひとつ)から発売された『オールスター・コミックス(All-Star Comics)』24号掲載の「これが私たちの敵だ(This Is Our Enemy)」[14]というストーリーになります。

『オールスター・コミックス』はアメリカにおける最初のスーパーヒーローチームとして知られ、複数のヒーローキャラクターたちが同一の世界に生活しているという「ユニバース」という考え方を定式化したともいえるジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカというヒーローチームがおもに活躍するコミックブックタイトルです[15]。
ただ、現在ではDCコミックスの人気キャラクターになっているワンダーウーマン、フラッシュ、グリーンランタン、ホークマン、ドクター・フェイトらが登場するこのタイトルは、ヒューマントーチとネイマーの場合のような、わかりやすいヒーロー同士の対決、共闘ではなく、現在の眼から見てもちょっと変わった構成で脚本がつくられていました。
当時のコミックブックは、現在のスーパーヒーローコミックスとは違い、基本的に一号完結であり、悪役が再登場することはありますが、次号以降に話を引いたりすることはあまりありません。
また、1〜8ページ程度の短い作品が複数掲載されているアンソロジースタイルのタイトルが主流で、掲載されている作品や登場するキャラクター同士が関連性を持っていることも稀でした。
異なった主人公による無関係な短編が複数連載されている形式が主流だった40年代のコミックブックで、『オールスター・コミックス』は毎号簡単なプロローグがあり、続いてその号に登場するメンバーが個別に活躍するストーリーが語られ、エピローグで再び全員集合する、という一種の連作短編集のような形式が毎号取られていたのです。

こうしたかなり特徴的な様式で描かれている『オールスター・コミックス』の物語の中でも、戦時作家会議の監修でつくられたという「これが私たちの敵だ」は相当変わった話だといえると思います。

この物語において冒険に旅立つのはジャスティス・ソサエティ所属のヒーローたちではなく、ディック・アンバーというホークマンの隣人青年です。ヨーロッパにおけるドイツとの戦争、その大義について疑念を抱くこの青年に対してジャスティス・ソサエティのメンバーたちは女神「コンシエンス(conscience、良心の意)」を召喚し、アンバー青年を中世のチュートン騎士団の時代から第一次大戦後に至るまでのさまざまな時代にドイツ人として転生させ、各時代でいかに彼らが戦争賛美的であり、自分たちの欲望のみに忠実で他国を踏みにじってきたか体験させることによって、彼の考えを変えようとします。
ホークマンやドクター・フェイトといった彼の冒険に同行するメンバーたちは各時代におけるアンバー青年の護衛役をつとめるだけで、各時代の物語には基本的に介入しません。
エピローグでは一連の経験によってアンバー青年は説得され、従軍してドイツとの戦争に向かうことを決意するのですが、最終ページでドイツ人が歴史的に軍国主義へ傾斜してきた国民性を持つことや、現行の国際情勢の中でその野望を挫くことの必要性、連合国側の正義が箇条書きで説かれてこの作品は終わります。
この筋立てはスーパーヒーローコミックスというより、当時のアメリカ人読者に対してドイツとの戦争の正当性を説く学習マンガのようです。

 

「正しい戦争」としての第二次世界大戦

ハーシュ論文が興味深いのは、こうした戦時作家会議による戦時プロパガンダが発するメッセージを「矛盾したもの」として捉えている点だろうと思います。

先にも述べたように40年代初頭の「愛国ヒーロー」たちの存在は、多民族社会であるアメリカ合衆国の本来バラバラである国民意識を統合し、アメリカの民主主義的な精神、価値観を統一された「正義」として称揚するためのものでした。
そのためにアメリカ国内の人種、民族的な多様性や女性の権利への理解が強調され、そのような差異を包含したアメリカの民主義的な正当性がコミックブックの中で(少なくとも戦争参加初期には)強調され、一方で戦争が長期化し、より戦争遂行の意義を強調する必要性が強くなってきていた「これが私たちの敵だ」制作時の1944年には、ドイツや日本の社会の中での個人としての価値観の差異は存在しないかのように描くことが求められました。
例えばナチスを支持しないドイツ人というような人物を「登場させない」ために、「これが私たちの敵だ」の中では「アメリカ人青年がドイツ人として過去のドイツ社会に転生する」という複雑な物語上の枠組みが要請されているわけです。

内においては「多様性を認める民主的な社会」としてのアメリカをスーパーヒーローたちのモラリスティックな行動によって価値づけ、一方で外にある「敵」としてのドイツや日本は多様性を欠いた悪として単純化して描かれることをハーシュはこの論文の中で一種の矛盾であるとしています。

また、これはハーシュも示唆していることなのですが、そもそも「愛国ヒーロー」たちが喧伝していたような統合された「アメリカ的価値観」なるものは、それ自体が虚構ではないか、という論点について考える必要もあるでしょう。
ニュージーランドの文化史ライター、ミア・ソスタリックは2019年に発表した論文「第二次世界大戦中のアメリカにおける戦時プロパガンダ(The American Wartime Propaganda During World War II)」[16]の中で「第⼆次世界⼤戦が「良い戦争」として⻑く記憶されてきた中で忘れ去られてきた事実」として、第一次世界大戦への参戦を当時のアメリカ国民の多くは批判的に捉えており、ヨーロッパの戦争にアメリカ合衆国が参戦すべきか否かについては国論が二分されていたことを指摘しています。

ハーシュやソスタリックらの論考を踏まえたとき、アメリカで現在、第二次世界大戦が「良い戦争」としてノスタルジックに記憶されていること自体が、コミックブックやパルプ小説、映画やラジオドラマのような大衆文化を通したプロパガンダによって遡及的につくりあげられていった虚像なのではないかという疑問がそこには生じてくるでしょう。

 

「戦争」の格差

あるいは、こうした「理想化された戦争」としてのアメリカにおける第二次世界大戦像が孕む問題は、その後の「戦争」、朝鮮戦争やベトナム戦争、「テロとの戦い」などとの比較によってより一層あきらかになるなるものかもしれません。
ベトナム戦争をキッカケとしてノンフィクションライターとしてのキャリアを始めたデイヴィッド・ハルバースタムはその著書『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争』[17]で朝鮮戦争と第二次世界大戦の間に横たわるこのイメージ的な落差を端的に「朝鮮戦争には、第二次世界大戦にあったあの栄光と正当性はかけらもなかった」と書いていました。
ハルバースタムはアメリカ社会の中で(従軍した兵士以外の)誰もが忘れようとしている「歴史から見捨てられた戦争」である朝鮮戦争とマスメディアの発達とカウンターカルチャーの熱狂の中でアメリカの闇を象徴するようになったベトナム戦争も区別していますが、そこでは朝鮮戦争の勃発から停戦、ベトナム戦争の泥沼化と実質的なアメリカの敗北という一連の流れが、60年代の反戦運動と70年代のニクソン・ショックを経て、第二次世界大戦が象徴する「アメリカの正義」が信じられなくなっていった過程として理解されているようにも思えます。

コミックブック業界においても、80年代には『ウォッチメン』や『ザ・ナム』などで同時代の戦争への幻滅と自省が描かれる一方で、じつは60年代末以降、ロイ・トーマス[18]をはじめとするコミックスファン出身のクリエイターたちが一度は廃れた40年代のスーパーヒーローキャラクターたちを積極的にリバイバルしていました。
彼らは自分たちの少年時代の戦争への熱狂を正当化するかのように、第二次世界大戦期のヒーローたちを理想化するような作劇をおこなっていたのです[19]。
スーパーヒーローコミックスに関する議論では『ウォッチメン(Watchmen)』[20]や『バットマン:ダークナイト・リターンズ(Batman: The Dark Knight Returns)』[21]などで描かれた「アメリカの正義」の相対化が論じられることが多いですが、じつはあまり語られる機会のない「第二次世界大戦にあったあの栄光と正当性」を価値づけようとした後者の問題点こそ考えられるべきなのかもしれません。

 

 


1 Captain Americaの称号を名乗るキャラクターはスティーブ・ロジャース以外にもEnd Game後のMCUでの元Falcon/サム・ウィルソンなど複数存在するが、ウィルソンのように超人血清と無関係な人物もいれば、1950年代に当時の赤狩りの風潮に合わせてつくられた「反共産主義者」のキャプテン・アメリカが、1972年のストーリーで遡及的に別人として設定変更されたウィリアム・バーンサイドや2004年刊行の“Truth: Red, White & Black”(Robert Morales脚本, Kyle Baker作画, Marvel Comics)で初登場した超人血清の再現のための人体実験によって能力を得た黒人兵士イザイア・ブラッドレーなど、(多くの場合不完全な)超人血清による能力得たキャラクターも存在する。このため、作劇上は完全に研究データが失われたわけではなく、不完全な製法などの情報は残っていたものと考えられる。
2 Joe Simon脚本, Jack Kirby作画, “Meet Captain America”, “Captain America Comics”#1, 1940, Timely Comics
3 John Johnston監督, “Captain America: The First Avenger”, 2011, Paramount Pictures
4 Joss Whedon監督, “The Avengers”, 2012, Walt Disney Studios
5 ロシアとウクライナの戦争の背景となる問題について描いたグラフィック・ルポルタージュとしてイタリアのアーティスト、イゴルトの『ウクライナ・ノート 対立の起源』、(栗原俊英訳、花伝社、2022)『ロシア・ノート アンナ・ポリトコフスカヤを追って』(栗原俊英訳、花伝社、2023)がある。
6 パレスチナ問題に関してはアメリカの作家、ジョー・サッコが『パレスチナ』(小野耕世訳、いそっぷ社、2023)『ガザ 欄外の声を求めて』(早尾貴紀訳、Type Slowly、2024)などの作品を継続的に発表している。
7 1939年にパルプ雑誌の出版者だったMartin GoodmanがFunnies.Incが所有していたコミックブック制作会社を買収してTimely Comicsを設立、“Marvel Comics”を創刊(2号から“Marvel Mystery Comics”に誌名変更した)。同社は1950年にAtlas Comicsに社名変更、さらに1961年に現在のMarvel Comicsに社名変更した
8 Carl Burgos, “Human Torch”, Bill Everett, “Sub-Mariner”, Carl Burgos & Bill Everett, “The Human Torch vs The Sub-Mariner”, “Marvel Mystery Comics” #8~10, 1940, Timely Comics
9 Harry Shorten, Irv Novick, “The Shield – G-Man Extraordinary”, “Pep Comics” #1, 1940, MLJ Publications Inc.
10 Joe Simon脚本, Jack Kirby作画, “Meet Captain America”, “Captain America Comics”#1, 1940, Timely Comics
11 第二次世界大戦時のコミックブックと戦時プロパガンダの関係全般に関しては論集“The 10 Cent War: Comic Books, Propaganda, and World War II”(Trischa Goodnow, James J. Kimble共編,Univ Pr of Mississippi, 2018 )がある。
12 Paul Hirsch, “This Is Our Enemy”: The Writers’ War Board and Representations of Race in Comic 1942–1945, “Pacific Historical Review”, 2014, Vol.83, No.3, University of California Press, https://www.jstor.org/stable/10.1525/phr.2014.83.3.448
Books
13 「戦時作家会議(Writer’s War Board)」の活動全体については研究書として“Soldiers of the Pen”(Thomas Howell, Univercity of Massachusetts Press, 2019)が出ている。
14 “This is Our Enemy”, “All-Star Comics” #24, 1945, All-American Publications
15 正確にはJustice Society of Americaの初登場は“All-Star Comics”#3(1940, All-American Publications)
16 Mia Sostaric, The American Wartime Propaganda During World War II, “Australasian Journal of American Studies”, JULY 2019, Vol.38, No.1, 2019, Australia New Zealand American Studies Association, https://www.jstor.org/stable/10.2307/26926687
17 David Halberstam, “The Coldest Winter: America and the Korean War”, 2007, Hyperion Books, 邦訳は山田耕介, 山田侑平訳, 『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争』, 2009, 文芸春秋社
18 Roy Thomas アメリカのコミックスライター、編集者。1960年代はじめに“Alter Ego”、“Xero”などのSFコミックスファンジンで執筆し、1966年にマーベルコミックスに入社。
19 まず1969年にマーベルコミックスでキャプテン・アメリカ、ヒューマン・トーチ、サブマリナーといった40年代のスーパーヒーローたちが組んでいた“Invaders”を“Avengers”#71に登場させ、1981年にDC Comics“Justice League of America”#193でJustice Society of AmericaとSeven Soldiers of Victoryという二つのゴールデンエイジのスーパーヒーローチームのメンバーを中心とした“All-Star Squadron”を登場させている。この二つのチームは40年代には存在していなかったため、遡及的な設定変更である。
20 Alan Moore脚本, Dave Gibbons作画, “Watchmen”, 1986, DC Comics, 最新の邦訳は石川裕人, 秋友克也, 沖恭一郎, 海法紀光訳, 『ウォッチメン』, 2009, 小学館集英社プロダクション
21 Frank Miller脚本, 作画, “Batman: The Dark Knight Returns”, 1986, DC Comics, 最新の邦訳は2001年刊の続編“Batman: Dark Knight Strikes Again”との合本、石川裕人, 秋友克也訳, 『バットマン:ダークナイト』, 2009, 小学館集英社プロダクション