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2023.04.10

プロが選ぶオススメの物語創作指南書3冊
脚本家・政池洋佑選

プロが選ぶオススメの物語創作術3冊 / 政池洋佑

小説投稿サイトや動画配信プラットフォームが整備され、誰もが自分の物語を発表できる時代。わたしたちは、誰もが「作者」になることができる時代を生きています。しかし、わたしたちの身の回りには、すでに膨大な数の物語(小説、マンガ、映画、ゲーム、アニメなど)が存在しています。どうすれば、人を惹きつける物語を書くことができるのでしょうか。その悩みを解消すべく、これまで数多くの物語創作指南書が刊行されてきました。書店行けば、さまざまな切り口の、そしてさまざまな難易度の指南書が並んでいます。あまりにもその数が多いので、どれを読めばよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本連載では、さまざまなジャンルで活躍するプロの作家の方々に、各自の視点から「オススメの物語創作指南書」を3冊選んでいただきます。

第4回目は『ハケンアニメ!』で、第46回日本アカデミー賞優秀作品賞・優秀脚本賞を受賞した脚本家の政池洋佑さん(@masaizokuzoku)。20代から多くの脚本本を読み漁ってきた自称「脚本本マニア」の政池さん選りすぐりの3冊を紹介します。

分かりやすくモチベーションが下がらない3冊

「脚本本マニア」。そう言っても良いぐらい、20代から、多くの脚本本を読み漁ってきた。今でも、新しく発売した本は、ほとんどチェックしている。ただ、物語創作の指南書は分かりづらいことが多い。脚本家を志した頃、その分かりづらさに何度、心を折られたことか。なので、今回は特に分かりやすく、モチベーションが下がらない3冊を紹介しようと思う。

『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』
ブレイク・スナイダー=著
フィルムアート社

すでに購入している方も多いと思うが、この本だけは外せない。
この本に出会った時、感動した。なんて、読みやすいんだ、と。こんなにも読みやすい脚本本が存在していたなんて。フィルムアート社に毎年、お中元を贈りたいぐらい感謝している。
内容も凄い。ログラインの書き方、キャラクターの作り方、ストーリーの作り方。全てを網羅している。特に「ブレイク・スナイダー・ビート・シート(=BS2)」は、ストーリーの展開を作る上で欠かせない。これを理解し、それを自分流にアレンジできるようになれば、多くの物語を生み出せると思う。
読むたびに新しい発見があるので、今でも新しいドラマを書き始める時は、この本を読んでから、執筆を始めるようにしている。キングオブ脚本本。

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▼ためし読み

・Chapter1 どんな映画なの?
・Chapter4 さあ、分解だ!

 

『キャラクターからつくる物語創作再入門 「キャラクターアーク」で読者の心をつかむ』
K.M.ワイランド=著
フィルムアート社

この本も、とにかく分かりやすい。
ストーリーの中で、どうすればキャラクターが成長するのかが、論理的に書かれている。『SAVE THE CATの法則』で、ストーリーの作り方を学んだ後、この本を読めば、そのストーリーの中で、キャラクターを成長させる方法が分かる。
特に『登場人物の持つ「NEED」と「WANT」』を知っているかどうかで、キャラクターの深さが大きく変わると思う。また、本に出てくる実例も『トイ・ストーリー』『ジュラシック・パーク』『マイティ・ソー』など、誰もが理解しやすいものが多いので、読みやすさが抜群。
物語は、やっぱりキャラクターが命。展開や、キャッチ―な場面も大事だけど、キャラクターが魅力的でなければ、多くの人を惹きつけることはできない。キャラクター作りに欠かせない一冊。

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▼ためし読み
・イントロダクション:人物の心の変化をストーリーの中で構成できますか?

 

『脚本を書くための101の習慣 創作の神様との付き合い方』
カール・イグレシアス=著
フィルムアート社

3冊目は、少し変化球の本。
脚本家になる上で大事なのは、脚本を書く能力を上げること以上に、脚本を書き続けることだと思う。全く売れていない時代、誰にも見向きをされていない時代に、脚本を書き続けるのは相当、辛い。心が折れる。そんな時、この一冊は、自分の伴走者となってくれる。
登場するのは、世界で活躍する有名脚本家22人。その人たちがどうやって脚本を書いているのか「101の習慣」が紹介されている。「インプットを絶やさない」「質問責めにする」「骨組みを作る」などの創作術はもちろんのこと、「辛い面を知っておく」「運動する」「恐怖心を手懐ける」など、モチベーションを下げずに書き続けるための方法も沢山、書かれている。22人のインタビューが掲載されているので、参考になる習慣もあると思うし、全く参考にならない習慣もあると思う。
でも、これだけ多くの実例があれば、きっと自分にマッチする脚本家の習慣もあるはず。そして、この本で紹介している最後の習慣は「何があっても書き続ける」だ。僕が脚本を担当した映画『ハケンアニメ!』でアニメ監督である王子千晴が「描くことの壁は描くことでしか越えられない」と言う場面があるが、やっぱり、諸先輩の言葉からも、書くことの壁は書くことでしか越えられないんだなぁと思う。
書き続ける。その力を与えてくれる、栄養ドリンク的な一冊だ。

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▼ためし読み
・CHAPTER 1 脚本家の素顔

 

政池洋佑さんのオススメ創作術3選

『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』
ブレイク・スナイダー=著
フィルムアート社

『キャラクターからつくる物語創作再入門 「キャラクターアーク」で読者の心をつかむ』
K.M.ワイランド=著
フィルムアート社

『脚本を書くための101の習慣 創作の神様との付き合い方』
カール・イグレシアス=著
フィルムアート社

【お知らせ】

フィルムアート社から刊行された「物語やキャラクター創作に役立つ書籍」を下記ページにまとめています。映画だけでなくゲーム・小説・マンガなどのジャンルにも応用可能です。脚本の書き方、小説の書き方に悩んでいる方はぜひご一読ください。

プロフィール
政池洋佑まさいけ・ようすけ

脚本家・構成作家。1983年生まれ。
主な脚本作品に、映画「ハケンアニメ!」、ドラマ「ミス・シャーロック」、「レンタルなんもしない人」、など。「ハケンアニメ」で、第46回日本アカデミー賞優秀作品賞・優秀脚本賞を受賞。2020年に脚本を担当した作品「スナイパー・時村正義の働き方改革」は日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組最優秀賞、令和2年度(第75回)文化庁芸術祭 優秀賞を受賞した。
twitter:@masaizokuzoku

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