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第4回目:ちくさ正文館・古田一晴さん

書店員さんがオススメするフィルムアート社の本 / 古田一晴

フィルムアート社は会社創立の1968年に雑誌『季刊フィルム』を刊行して以降、この50年間で540点を超える書籍(や雑誌)を世に送り出してきました。フィルムアート社の本と読者をつないでくださっている全国の目利きの書店員さんに、オススメのフィルムアート社の本を紹介していただく本連載。今回はちくさ正文館の古田一晴さんにオススメ本を紹介していただきました。

 

『季刊FILM』が創刊された1968年、名古屋では「シアター36(サブロク)」がオープンします。アングラ芝居の小屋でしたが、ゼロ次元、発見の会、TFOの上映会、火田詮子のデビューもこの場所でした。

その頃は自主上映専門の場所がなく、毎回違っていました。名古屋には、アメリカ文化センターがありましたから、「アメリカ実験映画30年の回顧展」(71年)などで一般公開されない重要作を観られました。シェルドン・レナン氏の解説がありました。「美術手帖」1970年11月号で「地下映画」特集があり現実感が増します。そんななか、1971年に、後に私たちと合体する「TFO」が早くも結成されます。1972年、小劇場の先がけで現在も生き残っている「七ツ寺共同スタジオ」が9月オープンします。シアター36はその半年後に幕を閉じます。当時は、映画に限っても『さようならCP』(原一男)、「オーバーハウゼン国際短編映画祭」、『初国知所之天皇』(原將人)、「ナゴヤシネアスト(82年、現名古屋シネマテーク開館)の上映会」など様々でした。

 

『アメリカの実験映画  <フィルム・カルチュア>映画論集』

アダムズ・シトニー=編 石崎浩一郎=訳
A5判並製|320頁|定価: 1,800円+税|ISBN 978-4-8459-0720-2

 

小屋の代表者、二村利之氏は「名古屋自主上映センター」も継続していました。71年『アントニオ・ダス・モルテス』(グラウベル・ローシャ)の上映会も主催していました。私はその頃には二村氏との交流も深まります。72年、P・アダムズ・シトニー編『アメリカの実験映画 <フィルム・カルチュア>映画論集』(フィルムアート社)の刊行は自主上映を続けるなか、企画の参考以上に刺激的な書物でした。73年末、二村氏と私と友人二人で「狼少年牙王社」を結成します。第一回の上映会は、ジョナス・メカスの『リトアニアへの旅の追憶』に決め、74年4月に実現しました。同年刊行の『メカスの映画日記 ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959-1971』(フィルムアート社)は私たちの当時のバイブル的書物で、現在でも全く色あせていません。76年12月、TFOと合体し「シネマルームT&G」を結成します。ゼロ次元の岩田信市さんにさそわれ、「大須実験ギャラリーA・M・P」創設に参加します。3年弱で閉じますが、実験映画総おさらいの場として忘れがたいです。

 

メカスの映画日記 ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959-1971

ジョナス・メカス=著 飯村昭子=訳
A5判| 400頁|定価:3200円+税| ISBN 978-4-8459-7406-1

 

99年『メカスとその仲間たちの小さな国際展』(カノーヴァン)に、現在の「パルル」の実行委員会として久々に関わりました。メカスの豆が、今でも忘れられないです。

プロフィール
古田一晴ふるた・かずはる

1974年2月、アルバイト入社。78年4月、デレク・ベイリーソロコンサート、5月、アリアドーネの會『刺青』にスタッフ参加。10月よりレギュラー入社。小林信彦サイン会+著作展(『笑学百科』刊行記念)、土本典昭『水俣の図・物語』上映記念、『丸木位里・俊原画展』、D・クローネンバーグ『裸のランチ』の上映に合わせ、ブック・フェア「バロウズとビートジェネレーション」(この2企画は名古屋シネマテークとの連携)、『高丘親王航海記』(天野天街演出、七ツ寺共同スタジオ20周年記念)、「澁澤龍彦著作展」などオリジナル企画多々。現在に至る。

 

 

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