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2020.03.24

第9話 未来を強くする日の話

〇〇の日の話 / 大前粟生

 水田さんとゆずると私の三人でワイファイのある場所を探していた。そしたらたどり着いたのは市民センターで、やっぱりここで集まるんかあと笑った。ビデオ通話をみずはちゃんと繋いだ。きのう、みずはちゃんは進学する大学の近くに引っ越してしまった。
「ひとり暮らしどう?」
 私たちはみずはちゃんに聞いた。
「うーんまあまあ」とみずはちゃんはいう。
 私たちはとてもなかよしだけれど、あんまり話すことってないんだよな。話し込んだり、盛り上がったりしなくても別にいい、なにかが起きなくてもお互いを信頼しているっていうなかよしだった。
 カメラをぐるっと動かして、みずはちゃんが自分の部屋を見せてくれる。「わー」って私たちはいう。
 そっちは
            ど
         う
 な    
             ん
 突然、電波が悪くなって、みずはちゃんの声がずれて聞こえる。その少しあとにみずはちゃんの口がぱくぱく動いた。
 いつもどうり、と私たちはいう。この声も向こうにはずれて聞こえてるのだろう。みずはちゃんの顔、固まってフリーズしている。それを写真に撮って送った。切る? とチャットがくる。切ろか。
 ビデオ通話を終了すると水田さんがため息をついた。水田さんもゆずるも私も、あと何日かしたらそれぞれ下宿先に引っ越す。こうやって集まっているかけがえのなさが、そのまま虚しさになってるみたいにさびしかった。なにかいうべきことがあるのに、うまく言葉にならない。なぜか私は「なんかうどんたべたくなってきた」とかいってるし。「な」とゆずるがいう。水田さんはもう一度ため息をつくと、かつかつ歩いて棚のところからこの前見た記念日の本を持ってきた。その本によると今日は「未来を強くする日」だった。
「未来をつよく、したいなあー」
 佳代子とあっちゃんとチャーミとマミの「昔 ピュアな乙女達の同窓会の日」みたいに、私も、私たちのための強い未来がほしかった。
「未来、弟に占ってもらう?」と水田さんがいった。水田さんの双子の弟の京志郎くんは占いができた。
「うーん占いとかそういうのじゃなくて」
「タイムカプセル埋めるとか?」
「ああうんそういうのに近い」
「でもみずはもう向こういったし」
 どうしようかなあと三人でうんうん考えた。書こうか、と突然思った。
「わたしらの未来のことを書くのは? 書いたら存在してるみたいになる」
 水田さんもゆずるも、チャットで聞いたらみずはちゃんも賛成してくれた。四人で、未来のことを書くことにした。これってただの想像で、妄想で、でも願いで、小説とかそういうのに近いのかな、って思う。そこに書いてあることが、私たちの未来になる。
 ぜんぜん思い浮かんでこなかったけれど、まずはこのふたつだけ決めて書いた。

 しあわせになること
 しなないこと