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2026.10.09

マンガ研究者・小田切博によるアメリカン・ヒーロー・コミックスを解説した連載。第18回目の今回は全3回にわたって続いた「クロスオーバー」の歴史をたどる最終回です。『ウォッチメン』とDCユニバースが交錯する『ドゥームズデイ・クロック』から、スコット・スナイダーによる「メタル」「デス・メタル」、そして現在の「アブソリュート」。終わることのないスーパーヒーロー・コミックスは、その構造自体を物語の題材として取り込みながら変化を続けています。

 

 

(中編より続く)
スコット・スナイダー

1976年生まれのスコット・スナイダーは1973年生まれのジェフ・ジョーンズより三歳年少とほぼ同世代ですが、大学卒業後すぐに1978年公開の映画『スーパーマン』の監督であるリチャード・ドナーの元でアシスタントとして働き、そこで得た人脈から1999年にDCコミックスでライターとして活動するようになったジョーンズ[1]よりコミックブック業界で働くようになったのは10年ほど遅く、大学卒業後は一年間ウォルト・ディズニー・ワールドで働いたのちにコロンビア大学の文芸創作コースの修士課程に進み、複数の大学で教員をしながら2006年に商業出版デビューとなる短編小説集『ブードゥー・ハート(Voodoo Heart)』[2]を刊行、まず小説家としてそのキャリアをスタートさせています[3]。この短編集はスティーブン・キング[4]の眼にとまり、彼がゲスト・エディターをつとめた[5]『ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ2007(Best American Short Stories 2007)』[6]では「2006年の注目短編100選」として収録作二編が選出されました。

もともと熱心なコミックファンだったスナイダーは、2008年にスーパーヒーローをテーマとした短編小説アンソロジー『誰がいま私たちを救えるのか?(Who can Save Us Now?)』[7]に参加、2009年にまずマーベルコミックスでオリジナル・ヒューマントーチを主人公としたワンショット(一号完結のコミックブック)[8]の脚本を担当したのち、翌2010年にはDCのヴァーティゴレーベルで『アメリカン・ヴァンパイア(American Vampire)』[9]のレギュラーシリーズの脚本を、次いでマーベルでリミテッドシリーズ『アイアンマン・ノワール(Ironman Noir)』[10]の脚本を手がけると、以降コミックブック・ライティングのキャリアを本格的に開始することになります。2011年にはバットマン系タイトルのメインライターに就任してDCコミックスと専属契約を結び、2016年までそのストーリー展開を主導しました。2017年におこなわれたフルスケール・クロスオーバー『ダークナイツ:メタル(Dark Nights: Metal)』[11]でメインライターをつとめて以降は、DCコミックス全体のショーランナー役を担うライターのひとりになっています。
特に『ダークナイツ:メタル』が終了した2018年からその続編となる2020年のフルスケール・クロスオーバー『ダークナイツ:デス・メタル(Dark Nights: Death Metal)』[12]が終了するまでの期間は、DCコミックスのオールスターチーム『ジャスティス・リーグ』誌のメインライターもつとめており、2017年からの5年間のDCユニバースの物語は全体としてスコット・スナイダーが設定した枠組に従って動いていたといえるでしょう。

ただ、その「スコット・スナイダーの時代」を語る前に、2010年代のDCユニバースにはもうひとつ触れなければならない重要なイベントがあります。それが2017年から2019年まで中断を挟みつつ刊行された全12号のシリーズ、ジェフ・ジョーンズがDCコミックスに残した最後の大プロジェクト『ドゥームズデイ・クロック(Doomsday Clock)』[13]です。

 

終末時計と観察者

DCコミックスは2011年に出版25周年を迎えたアラン・ムーアとデイブ・ギボンズ[14]による古典『ウォッチメン』にまつわる新たな出版展開として、2012年に登場キャラクターたちの前日譚を語る八つのミニシリーズと一冊のワンショットを『ビフォア・ウォッチメン(Before Watchmen)』[15]の企画名の下で発売しました。
これは日本の読者にはあまりピンとこないかもしれませんが、企画が発表された時点でコミックファンのみならず一般メディアでも話題になるほどショッキングな出来事でした。
なぜなら、作品自体の企画者であり、脚本を担当し、すべてのキャラクターと物語を創造したこの作品のオリジネイターであるアラン・ムーアが『ウォッチメン』に関する前日譚や続編のような派生作品企画に対してはっきりと反対……というより全否定する姿勢をそれまでインタビュー等で述べ続けていたからです。
作品の著作権を所有するクリエイターが全否定しているにもかかわらず関連作品が出版されるのは不思議なことに思えますが、じつはこれ以前にもアラン・ムーアが明確に反対しているにもかかわらず、彼のコミックスが映画化されている事例が複数存在していました。

まず2001年に『フロム・ヘル(From Hell)』[16]、2003年には『リーグ・オブ・エクストラ・オーディナリー・ジェントルメン(League of Extra Ordinary Gentlemen)』[17]が公開されていますが、これらの映画のストーリーはムーアのコミックスとは大きく異なっています。しかも、20世紀フォックス制作の『リーグ・オブ・エクストラ・オーディナリー・ジェントルメン』に関しては、2003年にプロデューサーのマーティン・ポールと脚本家のラリー・コーエンがこの映画を自分たちの映画企画の盗作であるとして裁判所に提訴し、しかも彼らはムーアのコミック作品自体が20世紀フォックスが彼らの映画への関与を隠蔽するためアラン・ムーアに依頼したものだと主張していたのです[18]。

しかし、ムーアの作品の熱心な読者であれば、このような主張がバカげたものであることはすぐにわかります。なぜなら1990年代末から2000年代前半のムーアの作品は『リーグ・オブ・エクストラ・オーディナリー・ジェントルメン』に限らず、スーパーヒーロー物語に対する系譜学的な関心によって書かれており[19]、同作がその延長にある発想から構想された物語であることはあきらかだったからです。
映画原作の『リーグ・オブ・エクストラ・オーディナリー・ジェントルメン』は、ブラム・ストーカーの怪奇小説『ドラキュラ』のヒロインであるミナ・ハーカーを主人公に、H.ライダー・ハガードの冒険小説のヒーロー、アラン・クォーターメイン、ロバート・ルイス・スティーブンソンの『ジキル博士とハイド氏』のジキル/ハイド、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』のネモ船長、H・G・ウェルズの『透明人間』の透明人間など、19世紀に発表された娯楽小説の登場人物たちを集合させた冒険物語で、本作がヴィクトリア朝時代に発表された様々な文芸作品を素材に構築されたメタフィクションであることは2000年のインタビューでムーア自身が述べています[20]。

最終的に20世紀フォックスはポールとコーエンの訴えに対し裁判で争わず、原告側と和解することで問題解決を図ったのですが、アラン・ムーアはこれを自分の創作活動に対する侮辱と捉え、既にプロデューサーのジョエル・シルバーと映画化権契約を取り交わしていた『V・フォー・ヴェンデッタ』(2005)、『ウォッチメン』(2009)等の自身の関わるコミックス作品の映像化に対しても完全に否定的なスタンスをとるようになり、以降は映画への自身のクレジット表記もそこからの収入も拒否するようになりました[21]。

完全に作品の著作権を所有しているはずのオリジナルクリエイターが当該作品のメディア・フランチャイズ展開に関して拒否権を持てず、クレジットとロイヤリティーを拒否することでしか自身がその映像作品に関与しないという意思表示ができないことは理不尽にも思えますが、これらの映画に関してはムーアがすでに映画化権の許諾契約を取り交わしてしまっていたことが原因になっています。
同様に、アラン・ムーアが嫌悪感さえ表明していた『ウォッチメン』のスピンオフ作品がけっきょく発売されたのも、ムーアとデイブ・ギボンズがDCコミックスとこの作品の出版契約を結んだ際に付帯条件として「DCコミックスが同作の単行本を絶版にした一年後にムーアとギボンズに出版権(とおそらくそれに付随する商品化権や二次的著作物制作の許認可権等の諸権利)が返還される」という条項が含まれていたためです[22]。
ムーアは1985年にDCコミックスとこの契約を結んだあと、同社が自分たちの許諾を得ずに作品のキャラクターグッズを制作、販売したことから出版社の対応に不信感を抱き、その後DCコミックスが自分の作品をおそらく永久に絶版にしないことに気付いて、DCコミックスと完全に袂を分かってしまいました。

前日譚である『ビフォア・ウォッチメン』とストーリー的には『ウォッチメン』の続編であり、同作とDCユニバースとのクロスオーバーでもある作品『ドゥームズデイ・クロック』が出版されたのも、この契約の存在(とムーアがインタビュー等で「法廷闘争は望まない」と述べていること)が理由でしょう。

 

スーパーヒーロー批判への返答

先に述べたように『インフィニット・クライシス』でジェフ・ジョーンズはDCユニバースから弾き出されてしまったキャラクターたちによるユニバースの改変というかたちで、読者からのフィードバックが物語世界へ与える影響をスーパーヒーローコミックスのテーマとして対象化していました。
これに対して『ドゥームズデイ・クロック』でジョーンズが描き出したのは、スーパーヒーローコミックスのクリエイターが抱える倫理的な問題だったといえます。

歴史的に「最初のスーパーヒーローユニバース」であるDCユニバースにある目的を持ってやってきた『ウォッチメン』世界のキャラクターたちは、まず自分たちが辿り着いたその世界では、アメリカをはじめとする各国が人体実験によって超人を創り出し、自国の軍事、政治的影響を高めようとしているという「スーパーマン・セオリー」と呼ばれる陰謀論が市民社会に激しい反超人感情を巻き起こしていることを知ることになりました。
物語は彼らウォッチメン世界の住人たちと深刻な社会不安の中にあるDCユニバースのヒーローや悪役たちの動きを交互に描きながら、彼らが出会っていった結果生じるあるカタストロフに向かっていきます。

この作品最大のキーキャラクターになるのは『ウォッチメン』同様、原子物理学を利用した新理論の検証実験中の事故によって神のような能力を手に入れたドクター・マンハッタン[23]ですが、『ウォッチメン』における彼が「全能に近い能力を手に入れてしまったときに人間はどうなってしまうのか」というSF的な思考実験を具体化する役割を担っていたのに対し、『ドゥームズデイ・クロック』でのドクター・マンハッタンは「マルチバース」の更に外側の「メタバース」からマルチバース全体のあり方を書き換えてしまうコミックブックの作者のような存在です。そのような存在である彼が「最初のスーパーヒーロー」であるスーパーマンと出会うことで何が起きるのか、これがこの作品のクライマックスであり、結論でもあります。

ジェフ・ジョーンズはこの作品に関するインタビューで、『ドゥームズデイ・クロック』は「きわめて個人的」で「独立した作品」であると同時に「DCユニバース全体に影響を与える」とも言っている[24]のですが、これはこの作品でそのような構造の物語を構築することで、本作完結の年である2019年にアマゾン・プライムで実写ドラマが配信され大ヒットした『ザ・ボーイズ(The Boys)』[25]のような『ウォッチメン』以降に盛んになった「スーパーヒーローコミックスを批判的に解体する」ようなタイプの作品、作劇に対して、現役の「スーパーヒーローコミックスの作り手」としてのジョーンズが返答したということなのでしょう。
そして、その物語は今後も続いていく「DCユニバース」の物語に対するアンセムにもなっています[26]。周到なことに、それと同時にこの作品の最終盤ではDCユニバース全体の歴史と「DCリバース」期の世界観の説明までなされているのですが。

 

多元宇宙の裏側

このDCユニバースにおけるジェフ・ジョーンズのスワン・ソングである『ドゥームズデイ・クロック』がいまだ刊行途中だった2017年から2018年にかけて展開されたフルスケール・クロスオーバー・イベントが、スコット・スナイダーの企画・脚本による「メタル」二部作の開幕編、『ダークナイツ:メタル』でした。

作風は違いますが、スコット・スナイダーとジェフ・ジョーンズはじつはかなり似たタイプのライターです。際立った構想力をもって長期的な展開をデザインし、キャラクターを動かして物語を紡ぎながら、それでいて自分のアイディアを共作者に押し付けるような作家主義には陥らない、あくまでもチームプレイでプロジェクトを進めていく協調型の作家であるという点でこの二人は共通しています。

スナイダーは「ニュー52」で新規巻き直しになったバットマンの物語を「ポスト・クライシス」期のようなハードボイルド的な孤高のヒーローの物語にはせず、参加当初の企画である2011年のミニシリーズ『バットマン:ゲート・オブ・ゴッサム(Batman: Gates of Gotham)』[27](カイル・ヒギンズ、ライアン・パロットとの共作)から都市論的な視点を持ったゴシックホラー的な世界観へ作り変えていきました。キャラクター的にもブルーバード(ハーパー・ロウ)やシグナル(デューク・トーマス)などのより若いキャラクターたちをサポーティング・キャストとして登場させ、世界観刷新以前に登場していたキャラクターたちの再登場と併せてバットマンの物語をバットマン/ブルース・ウェインを中心にした群像劇に仕立て直していったのです。
また、彼は共作を好み、自身がメインライターをつとめていたバットマン系のタイトルでの後半の主要な展開を、複数のライターと共同で『バットマン:エターナル(Batman: Eternal)』[28]という週刊の大河長編タイトルとして展開するという思い切ったこともしています。

こうしたバットマン系のタイトルでの経験を経て、スナイダーは2017年に初のフルスケール・クロスオーバー『ダークナイツ:メタル』の脚本を担当することになりました。

『ダークナイツ:メタル』はおよそ変な話で[29]、この物語にはDCの52あるというマルチバースのさらに「裏側」にあるという「ダーク・マルチバース」なる新たな世界(群)が登場します。「ダーク・マルチバース」とは現行のDCマルチバースと対になる闇の多元世界で、そこはDC世界の住人達、バットマンやスーパーマン、ワンダーウーマンらの最悪の恐怖や絶望が具現化した世界(群)です。
この作品の冒頭で現行のDCユニバース(アース0)[30]のバットマン/ブルース・ウェインはそれまでのスコット・スナイダーによるバットマン・ストーリーの中である種の「呪い」を受けてきたことが明かされ、その呪いの成就から逃れようとしますが、闇の信奉者である敵の手でダーク・マルチバースに送られてしまい、彼の存在を「門」として入れ替わりに7人のダーク・マルチバース版のバットマンがDCユニバースに召喚されてしまいます。
「バットマン・フー・ラフズ」と呼ばれる、ジョーカーとバットマンをグロテスクにマッシュアップしたような「バットマン」を中心にした7人の闇のバットマンたちは、すべての多元世界を闇に沈めようと企む邪龍「バルバトス」の意図を実現するために動いており、『ダークナイツ:メタル』の物語本編はこの邪龍とヒーローたちとの戦いです。

2018年に発売されたこのシリーズの単行本に寄せた序文で、スコット・スナイダーはバットマンでの共作者グレッグ・カプロと実現した「個人的」な作品としての物語と現代のコミックブック産業が提供している「イベント」を比較し、その商業主義と物語としての荒唐無稽さ、バカバカしさを批判しつつ、過去のクロスオーバーを再読することでそれらのイベントを体験することの「楽しさ」を再発見した経験を書き記していました。
じつは比較的単純な聖杯探索の寓話としての構造を持つこの作品は、そうした「楽しさ」、スーパーヒーロー・コミックブックを読む体験を作品化する、というスコット・スナイダーという作家の第二期の幕開けを示すものになっています。

 

クリエイターと読者と産業

スコット・スナイダーは『ダークナイツ:メタル』後、『ジャスティス・リーグ』のメインライターをつとめることになる[31]のですが、その冒険を描くなかでスナイダーはより明確に現代のスーパーヒーロー・コミックス、そのイベント的な消費構造をテーマ化していくことになりました。

スナイダー期のジャスティス・リーグは基本的に「メタル」事件でヒーローたちが破壊してしまったマルチバースの力の源である「ソースウォール」の向こう側に封じられていた存在を巡る探究の物語です。
ヒーローたちはその過程で「メタル」事件を引き起こした邪龍バルバトスは、じつはそこに封じられていたDCマルチバースを創造した女神「パーペチュア(Perpetua)」によって操られていたことを知り、物語はマルチバースを自分の意図に沿ったものへと作り変えようとするパーペチュアとの対決へと進んでいきます。
物語の中で、パーペチュアはマルチバースそのものを創り出した存在である「ザ・ハンズ(The Hands)」の堕落した一柱であり、彼女の目的は自身と自らの被造物を永遠の存在にするために、絶え間なく危機と再生が繰り返される世界へとマルチバースを作り変えることなのだと説明されるのですが、このパーペチュアの持つ思想は、ジェフ・ジョーンズが持ち込んだメタレベルの危機の招来者としてのコミックブック読者でもクリエイターでもなく、産業としての永続性を求めるコミックブック出版社のあり方を風刺的に描いたものだと捉えることが可能でしょう。これに対して劇中で、世界の存続や改変、あるいは消滅を望む登場人物たちはそれぞれがクリエイターや読者の批評的な視点を代弁するような描き方をされています。

邦題にはなぜか「バットマン」と付けられていますが、スナイダーの「メタル」二部作の実質的な主人公をつとめているのはバットマンではなくワンダーウーマンです。
スコット・スナイダー版『ジャスティス・リーグ』を経た、2020年のフルスケール・クロスオーバー・イベントである第二部『ダークナイツ:デス・メタル』では、すでにジャスティス・リーグを中心としたヒーローたちはパーペチュアに敗北しており、バットマン・フー・ラフズによって支配された「アース0」のグロテスクな世界から物語が始まります。物語冒頭、ワンダーウーマンは反抗者たちが幽閉されている冥界の管理者として不本意な服従を強いられているのですが、送り込まれてきた謎の囚人に出会ったことで反撃の希望を抱くようになります。彼女はレジスタンス活動を続けていたバットマンや幽閉されていたスーパーマンなどのかつての仲間たちと合流し、現在の地獄のような現状を覆すために、パーペチュアのエネルギー源となっている過去の三大クライシス(「クライシス・オン・インフィニット・アース」、「インフィニット・クライシス」、「ファイナル・クライシス」)でヒーローたちが敗北したダーク・マルチバース世界にそれぞれ向かうのですが……この敵の設定やヒーローたちの冒険行の行き先が過去の「クライシス」世界であることから見ても『ダークナイツ:デス・メタル』という作品が、クロスオーバー・イベントを軸に展開されている現代のスーパーヒーローコミックスのあり方を題材にした「ポストモダン」な物語であることがわかります。
コミックブック出版社の商業主義をキャラクター化したようなパーペチュアを打倒し、最後の敵となるのがバットマン・フー・ラフズがドクター・マンハッタンの能力を取り込んだ「ダーケストナイト」であり、彼があくまでも自分のビジョンに基づいた世界しか認めない作家主義の権化ともいえる存在であること、彼と対峙するワンダーウーマンの力の源がこれまでのDCコミックス/スーパーヒーローコミックスの物語すべてを思い出し、肯定することにあることなど、イベントとしてのキャッチーな装いやマーケティング的な配慮、表面的なけばけばしい派手さにも関わらず、このシリーズははっきりと「商業主義的なエンターテインメント」としてのスーパーヒーローコミックスのあり方を主題にしたメタフィクションなのです。

最後の戦いの後に設けられたワンダーウーマンとDCマルチバースを失敗であると断じ消滅させようとしていると思われていた「ハンズ」との対話で語られる内容は、現代のスーパーヒーローコミックスに対する批評としてもきわめて興味深いものです。
また、この作品全体に漂うグロテスクでペシミスティックな明るさは、この作品が第一次トランプ政権下での新型コロナウィルスによるパンデミックのただ中に制作、出版されたものであることを踏まえたとき、より一層なにがしかの感慨を抱かせられるものではないかと思います。

 

デス・メタル以後

最後にできるだけ駆け足で『ダークナイツ:デス・メタル』以降のDCコミックスとスコット・スナイダーについて触れておきましょう。

DCコミックスは『ダークナイツ:デスメタル』にて「DCリバース」イニシアチブを終了し、2021年から「インフィニット・フロンティア(Infinite Frontier)」を開始、この新イニシアチブからは「マルチバース」自体が複数存在する「オムニバース(Omniverse)」という新しい宇宙観へとDC世界は移行します。
そして、2022年にはその「DCオムニバース」の闇ともいえる存在との戦いを描くフルスケール・クロスオーバー『ダーク・クライシス・オン・インフィニット・アース(Dark Crisis on Infinite Earth)』[32]が展開、この事件での変化を受けて2023年からは新イニシアチブ「ドーン・オブ・DC(Dawn of DC)」に突入しました。
さらに2023年のイベント『アブソリュート・パワー(Absolute Power)』[33]を境に2024年からは更なる新イニシアチブ「DC・オール・イン(DC All In)」に切り替わるのですが、「ニュー52」、「DCリバース」がそれぞれ5年続いたのに対し、約2年ごとに大事件が起こり、イニシアチブも変わってしまうという状態になっており、皮肉なことにこれではむしろ『ダーク・ナイツ:デス・メタル』でパーペチュアが目指していた「絶え間なく危機と再生が繰り返される世界」にDCコミックスのメイン出版ラインは変わってしまったようにも見えます。

この間スコット・スナイダーはDCコミックスでの脚本執筆から離れ、2020年に設立を発表した自身のコミック制作スタジオ「ベスト・ジャケット・プレス(Best Jacket Press)」[34]から2021年にクラウド・ファンディングを利用してオリジナル作品第一弾『ノクターラ(Nocterra)』[35]刊行(発行元はイメージコミックス)、同年インターネット・コミックス配信サービスの古参であるコミクソロジー(ComiXology)[36]と同社のオリジナル・コミックスレーベル「コミクソロジー・オリジナル(ComiXology Originals)」[37]でのベスト・ジャケット・プレス作品8作のデジタル・ファースト契約を結び、うち三作を発売、購読型のSNSプラットフォーム、サブスタック(Substack)[38]を通じたオンライン・コミックス・ライティング・ワークショップの開講をアナウンスするなど、同スタジオでのクリエイター・オウンド作品の制作と教育活動に力点を移すかに見えました。

ところが、2014年にコミクソロジーを買収したアマゾンが、2023年にコミクソロジーと自社電子書籍プラットフォームであるアマゾン・キンドルの統合を発表し、コミックス配信サービスとしてのコミクソロジーは消滅し、2024年にスコット・スナイダーはDCコミックスへの電撃復帰を果たします。
この復帰後に彼が担ったのが、新たなユニバースを舞台にした新レーベル「アブソリュートDC(Absolute DC)」のメインライターの座でした。

その間にアメリカ社会では2020年の大統領選でジョー・バイデンが勝利し、民主党政権が誕生しますが、翌2021年1月、ドナルド・トランプ前大統領の煽動によって首都ワシントンに集まった数千人の彼の支持者がアメリカ合衆国国会議事堂を襲撃するという前代未聞の事件[39]を引き起こしてしまいます。
また、2019年に中国、武漢で集団感染が確認された新型コロナ・ウィルスの世界的な流行はアメリカ合衆国内に激しいアジア人差別の風潮を産み出し、アジア系をターゲットにしたと思われる暴力事件や銃乱射事件が続発するなど、アメリカ国内の政治的、社会的な分断はより大きくなっていきました[40]。
さらに2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻、2023年のイスラエルによるパレスチナ、ガザ地区への武力攻撃がはじまるなど国際的にも世界情勢は不安定化していきます。

 

社会風刺への回帰

そんな中、2024年のアメリカ大統領選挙では大統領在任中、退官後の二度の弾劾決議や性暴力、恐喝、公文書偽造等で多数の有罪判決を受けていた[41]にもかかわらず、「アメリカ・ファースト」を掲げる共和党のドナルド・トランプが再び勝利し、第47代アメリカ合衆国大統領に選出され、連邦職員の大量解雇や過激な移民取締政策など、第一次トランプ政権にも増して強権的な政権運営をおこなっています。彼は中東への外交政策においては、選挙戦中は戦争への関与を否定していたにも関わらず、イスラエル支持の立場から2025年、2026年の二度に渡り、イランへの直接軍事攻撃をおこないました。
この第二次トランプ政権の誕生とともにDC世界に復帰したスナイダーが主導するサブレーベル「アブソリュート・DC」は、「DC・オール・イン」イニシアチブの開始を告げるワンショット(単刊)コミックブック『DC・オール・イン・スペシャル(DC All In Special)』[42]で初登場した新設定「邪神ダークサイドが同一化することで生まれた並行世界」である「アブソリュート・ユニバース」におけるバットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンらの物語で、このアブソリュート世界はこれまでのサブレーベル作品と違い、まったくの別世界ではなく、メインのDCユニバースとも密接な関係を持っていることに特徴があります。

この点に関しては、スコット・スナイダー自身が2024年に配信された「アブソリュート・DC」ラインのプロモーションのためのインタビュー[43]でその重要性を強調しており、彼はこのインタビューで、現代のスーパーヒーローコミックスの創作には「馴染みのない新しい要素と、古典的な要素の両方」が必要で、そのことが個々のコミックブックのストーリーを超えた「より大きなメタ・ストーリー」を作り上げるのだと語っていました。つまり、きわめてメタフィクショナルな物語だった「メタル」二部作同様に、「DC・オール・イン」イニシアチブでスナイダーが語ろうとしているコンセプトは、メインのDCユニバースと「アブソリュート・DC」の二重構造自体を前提とした「ストーリー」なのだということになります。
すでにこの「メタ・ストーリー」の一端は2025年の対戦格闘ゲームの形式をパロディ化してスーパーヒーロー論を語る怪作フルスケール・クロスオーバー・イベント『DC K.O.』[44]で語られているのですが、そこでは物語を終わらせようとする存在としてのダークサイドとスーパーヒーローコミックスのレガシーを象徴するスーパーマンという新たな図式が提示されていました。

一方で、新たなサブユニバースであるアブソリュート世界は、腐敗し抑圧的な権力者、富裕層によって完全に支配された世界として描かれており、通常のDC世界とは逆に、ヒーローたちは法と秩序の側ではなく、蹂躙される弱者を守って権力と戦う、反体制的な立場にあるものとして描かれています。
スーパーヒーローコミックスにおいて、こうした善悪が逆転、あるいは不確かなものになる物語はこれまでも描かれてきたものですが、「アブソリュート・DC」の物語がこれまでになく強烈な意味性を持たざるを得ないのは、それが社会的分断と閉塞感を強めている2026年現在の第二次トランプ政権下にあるアメリカで書かれ/描かれているからです。
全体的に過剰な暴力描写と陰謀論的な悪としての権力が「アブソリュート・DC」タイトルのひとつの特徴になっているのですが、特にスコット・スナイダーが脚本を担当する『アブソリュート・バットマン(Absolute Batman)』[45]では、ブルース・ウェインをゴッサムシティのスラムであるクライム・アレイで育った貧しい若者、ブルーカラーの建築土木技術者で鍛え上げた肉体と自作の装備を用いて彼自身と周囲のひとたちを守ろうとする人物として再設定したことで、物語が直接的な社会風刺としての色合いを帯びることになりました。

そのもっともわかりやすいあらわれがコミック・アーティスト、ダニエル・ウォーレン・ジョンソン[46]が『アブソリュート・バットマン』の2025年度年次増刊で発表した短編「……いつもおまえのことを誇りに思っている(…I’ll Always Be Proud of You)」[47]とこの作品の発表に関連したネット上での炎上だと思います。

第二次トランプ政権は、その発足当初から強硬な移民排斥政策をとっており、その執行を担う機関であるアメリカ合衆国移民・関税執行局(Immigration and Customs Enforcement、通称ICE)[48]の過度に暴力的な対応が報道や拡散されたインターネット動画などで問題視され、議論を呼んできました。
そんな中、ダニエル・ウォーレン・ジョンソンは2025年10月のニューヨーク・コミコンでこの短編作成のために描いたと思われる習作スケッチを販売していたのですが、その中の一枚に移民・関税執行局の職員を文字通り「締め上げる」バットマンの姿が描かれていたのです[49]。このイラストがSNS上にアップロードされると、当然のようにネット上のコミックファンは騒然となり、左派と右派に分かれて喧々諤々の議論を繰り広げ、保守派として知られるコミックスライターが逆にICE職員のアブソリュート・バットマンのイラストを公募するというバカバカしい事態に発展しました。
当該のジョンソンの短編自体、白人至上主義者に対する露骨といってよい暴力による報復が描かれたものなのですが、この騒動が悪目立ちしていたためか、じつはあまり作品自体に言及されていた記憶がありません。

個人的には、このシリーズは暴力描写に歯止めが無さ過ぎ、陰謀論的に権力への応報感情を煽る側面が大き過ぎるのではないかと思うのですが、『アブソリュート・バットマン』は2024年から2025年にかけてのコミックブック業界最大のヒット作[50]になっており、むしろ「そういう作品」だからこそ売れているようにも思えます。

スコット・スナイダーは先述したDCコミックス公式サイト掲載のインタビューにおいて、この作品を「自分ではなく子供たちの世代にとっての恐怖を描いたもの」だと語っていました。
仮にアラン・ムーアが批判するようにスーパーヒーローコミックスが「12歳の子供」のためのものだったとしても、小学校で銃乱射事件の避難訓練がおこなわれ、マスメディアやネットでは党派的に「正義」が叫ばれる2026年のアメリカ社会では子供のためにこそ「社会」を描く必要があるのかもしれません。
そこで描かれる社会が、あまりにも陰鬱で暗いものであることにはどうしてもやりきれなさを感じてしまいますが。

 

 

注

[1] Derek McCaw, “An Interview with Geoff Johns”, “Fanboy Planet”, 2001, https://fanboyplanet.com/an-interview-with-geoff-johns/
[2] Scott Snyder, “Voodoo Heart”, 2006, The Dial Press
[3] Matt Borondy, “Scott Snyder”, “Identity Theory”, https://www.identitytheory.com/scott-snyder/
[4] Stephen King アメリカの小説家。「ホラーの帝王」と呼ばれ、特に日本国内ではホラー作家として語られることが多いが、他ジャンルでの著作も多く、近年はアメリカ文学として評価されている側面もある。ブラム・ストーカー賞、ローカス賞、世界幻想文学賞などの文学賞を多数受賞。テレビドラマ化、映画化された作品も多数あり、“American Vampire”のような自ら脚本を手がけたコミックス、自ら監修した小説のコミックス化もあり、コミックス分野への影響も大きい。
[5] Houghton Mifflin Harcourtから年刊で刊行されている“The Best American Short Stories”シリーズは、前年に発表された全ての短編小説から優れたものを毎年変わる「ゲスト・エディター」の著名作家が選び出した年次ベスト短編小説アンソロジーで、2007年のゲスト・エディターがスティーブン・キングだった。
[6] Stephen King編, “The Best American Short Stories 2007”, Houghton Mifflin Harcourt
[7] Owen King, John McNally編, “Who can Save Us Now?”, 2008, Free Press
[8] Scott Snyder脚本, Scott Wegener作画, “Human Torch Comics 70th Anniversary Special”, 2009, Marvel Comics
[9] Scott Snyder脚本, Rafael Albuquerque作画, “American Vampire”, 2010, DC / Vertigo, なお最初の5号はStephen Kingが本編の過去にあたるストーリーを書き下ろしている。
[10] Scott Snyder脚本, Manuel Garcia作画, “Ironman Noir”, 2010, Marvel Comics
[11] Scott Snyder脚本, Greg Capullo作画, “Dark Nights: Metal”, 2017, DC Comics, 邦訳は中沢俊介訳で『バットマン:メタル』の邦題で小学館集英社プロダクションから2018年に刊行
[12] Scott Snyder脚本, Greg Capullo作画, “Dark Nights: Death Metal”, 2020, DC Comics, 邦訳は中沢俊介訳で『バットマン:デスメタル』の邦題で小学館集英社プロダクションから2021年に刊行
[13] Geoff Johns脚本, Gary Frank作画, “Doomsday Clock”, 2017, DC Comics
[14] Dave Gibons イギリスのコミックアーティスト。アンダーグラウンドコミックスでの活動を経て、1970年代半ばイギリスのコミックマガジンで冒険もののコミックの作画を手がけるようになり、1980年代に入るとアメリカのコミックブック出版社と仕事をするようになる。
[15] Darwyn Cooke, “Before Watchmen: Minutemen”, Darwyn Cooke, Amanda Conner作画, Amanda Conner作画, “Before Watchmen: Silk Spectre”, Brian Azzarello脚本, J. G. Jones作画, “Before Watchmen: Comedian”, J. Michael Straczynski脚本, Andy Kubert, Joe Kubert作画, “Before Watchmen: Nite Owl”, Len Wein脚本, Jae Lee作画, “Before Watchmen: Ozymandias”, Brian Azzarello脚本, Lee Bermejo作画, “Before Watchmen: Rorschach”, J. Michael Straczynski脚本, Adam Hughes作画, “Before Watchmen: Dr. Manhattan”, J. Michael Straczynski脚本, Eduardo Risso作画, “Before Watchmen: Moloch”のミニシリーズ8作とワンショットLen Wein脚本, Steve Rude作画, “Before Watchmen: Dollar Bill”, 邦訳はヴィレッジブックスから秋友克也, 石川祐人訳, 『ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター』, 秋友克也, 石川祐人訳, 『ビフォア・ウォッチメン:コメディアン/ロールシャッハ』, 秋友克也訳, 『ビフォア・ウォッチメン:オジマンディアス/クリムゾン・コルセア』, 秋友克也訳, 『ビフォア・ウォッチメン:ナイトオウル/Dr.マンハッタン』の全四冊が2014年に発売
[16] The Hughes Brothers監督, “From Hell”, 2001, 20th Century Fox, 原作は1989年から中断を挟みつつ1988年に完結したAlan Moore原作, Eddie Campbell作画, “From Hell”, Top Shelf Comics
[17] Stephen Norrington監督, “The League of Extra Ordinary Gentlemen”, 2003, 20th Century Fox, 原作は1999年からImage Comics / WildStormで始まり、複数のシリーズが展開されたAlan Moore脚本, Kevine O’Neill作画の同タイトル作品、邦訳は秋友克也, 猪川奈都, 大島豊, 坪野圭介訳でヴィレッジブックスから三巻目までが2014年から2019年まで刊行
[18] “Studio sued over superhero movie The League of Extraordinary Gentlemen A Hollywood producer and a screenwriter are suing 20th Century Fox, accusing it of stealing the idea for the movie The League of Extraordinary Gentlemen”, “BBC News”, 2003, http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/3141720.stm
[19] たとえば“The League of Extra Ordinary Gentlemen”と同時期に出版されたImage Comics / WildStorm内のAlan Moore企画のサブレーベル“America’s Best Comics”の諸作品や1996年からRob Liefeldの依頼で脚本を担当した“Supreme”(Image Comics / Extreme)や“Judgement Day”(Awesome Comics)なども同様のメタフィクション的な関心、テーマで物語が書かれている。
[20] Barry Kavanagh, “The League of Extraordinary Gentlemen / comics / Voice of the Fire”, “Blather.net”, 2000, https://www.blather.net/projects/alan-moore-interview/league-extraordinary-gentlemen/
[21] 映画製作側のロイヤリティ支払いを免除したのではなく、共作したクリエイターに自身のロイヤリティが渡るようにした。
[22] Kurt Amacker, “Alan Moore Interview”, “seraphemera (books & music)”, 2012, https://web.archive.org/web/20180221211723/http://www.seraphemera.org/seraphemera_books/Alan_Moore_Interview.html
[23] Dr. Manhattan 本名はJonathan Osterman。劇中では蒼白い輝きに包まれた禿頭、全裸の男性という描写になっている。ドイツ系ユダヤ人であり、ネーミングはアメリカの原子力爆弾開発計画Manhattan Projectに由来する。
[24] Aaron Sagers, “Exclusive: DC Comics’ Geoff Johns reveals teaser, details on Watchmen/Rebirth title Doomsday Clock”, “SyFy Wire”, 2017, http://www.syfy.com/syfywire/dc-comics-geoff-johns-doomsday-clock-interview, また、このインタビューでジョーンズは“Doomsday Clock”の物語が2016年の大統領選挙でのドナルド・トランプ大統領誕生からも影響を受けていることを語っている。
[25] Garth Ennis脚本, Darick Robertson作画, “The Boys”, 2006, WildStorm/DC Comics(一巻目のみ), Dynamite Entertainment, 邦訳は椎名ゆかり, 上田香子訳で誠文堂新光社から、2017年から2021年にかけて発売。amazon primeでのドラマシリーズは2019年から2026年にかけて5シーズンが制作されている。
[26] 2012年の映画“Avengers”のヒットでエンターテインメントジャンルとしてのスーパーヒーローが再注目されるようになって以降、Alan Mooreはインタビューなどで特にスーパーヒーロー映画の隆盛を「幼稚化」、「ファシズムの前兆」として批判するようになった(たとえば
Sam Leith, “Watchmen author Alan Moore: ‘I’m definitely done with comics’”, “The Guardian”, 2022, https://www.theguardian.com/books/2022/oct/07/watchmen-author-alan-moore-im-definitely-done-with-comics)。“Doomsday Clock”はこうした批判に対するGeoff Johnsというスーパーヒーロー・フランチャイズの中心にいた作家からの反論と見ることもできる。
[27] Scott Snyder, Kyle Higgins, Ryan Parrott脚本, Trevor McCarthy作画, “Batman: Gates of Gotham”, 2011, DC Comics, 邦訳は高木亮訳, 2014, 小学館集英社プロダクション
[28] Batman: Eternal 2014年から2015年にかけて週刊で刊行されたバットマン/ブルース・ウェインを中心にしたヒーローや悪役たちが巻き込まれていくゴッサムシティの歴史の闇に潜む陰謀を描く。Scott Snyderを中心にJames Tynion IV, John Layman, Ray Fawkes, Tim Sheely, Kyle Higginsらのライターが脚本を書き、様々なアーティストが作画を担当した。2015年には続編的な位置づけでSnyderの跡を継いでバットマン系のメインライターをつとめるJames Tynion IVを中心にした“Batman &Robin: Eternal”が週刊で刊行された。邦訳は吉川悠訳で2017年に小学館集英社プロダクションより上下巻で刊行
[29] このシリーズのタイトルの「メタル」は音楽ジャンルとしてのヘビーメタルにかけられていて、アメリカのコミックブックとしてはアメリ見たことがないシリーズをテーマにしたイメージアルバム“Dark Nights: Metal”が4000枚限定の6曲入りアナログ12インチレコードとしてWarner Musicから発売された。
[30] 「ニュー52」以降のマルチバース観では現行のDCユニバースを「アース0」として「アース51」までの計52の並行世界が設定されている。
[31] Scott SnyderはJustice LeagueはJoshua Williamson, James Tynion IVとの共同脚本によるミニシリーズ“Justice League: No Justice”(Francis Manapul作画, 2018)を皮切りに、リランチされた“Justice League”(2018)の#1から#39までメインライターをつとめた。このシリーズは“Justice League: No Justice”を含め、すべて単行本化されており、全六冊がすべて小学館集英社プロダクションから邦訳が発売されている。
[32] Joshua Williamson脚本, Daniel Sampere作画, “Dark Crisis on Infinite Earths”, 2022, DC Comics, 邦訳は中沢俊介訳で2024年に小学館集英社プロダクションから刊行
[33] Mark Waid脚本, Dan Mora作画, “Absolute Power”, 2024, DC Comics, 邦訳は石川裕人訳で2025年に小学館集英社プロダクションから刊行
[34] Best Jacket Press 2020年にScott Snyderが設立したコミックス制作スタジオ。公式サイトhttps://shopbestjackett.com/では既刊のコミックブック、単行本の購買やメールマガジン形式のニュースレターの登録、サブスクリプションによるオンライン講座動画の閲覧などができる。
[35] Scott Snyder脚本, Tony S. Daniel作画, “Nocterra”, 2021, Image Comics
[36] ComiXology 2007年に公開されたコミックスに特化した電子書籍配信プラットフォーム、及びその電子書籍フォーマット。当初は同名企業によって開発、運営されていたが、2014年にamazon.comに買収され、2023年にamazonの電子書籍Kindleとリーダー、データフォーマットともに統合されて、実質的に消滅した。視線誘導を模したコマ単位で画面が遷移するガイドビュー機能によってデジタル・コミックス配信プラットフォームとして一世を風靡したが、これはあくまでも印刷されたマンガの電子化であり、2000年代半ばに登場した韓国発のWebtoonのようなネット配信に特化したデジタル・コミックス・フォーマットではなかった。
[37] ComiXology Originals ComiXologyが2018年からはじめたデジタル・ファーストでの電子出版レーベル。印刷版の刊行をDark Horse Comicsと一括契約することで、インターネット配信を先行しつつコミックショップ流通に対してもアプローチすることができる。2023年のKindleとの統合以降もこのレーベルは継続している。
[38] Substac アメリカの登録購買型のコンテンツ配信プラットフォーム。配信ユーザーはこのサービスを利用して、自身のチャンネルの登録者に直接ニュースレター、動画、ポッドキャストなどを配信することができる。2017年サービス開始。
[39] この事件に関しては2021年7月にアメリカ合衆国下院に特別調査委員会(通称January 6th Committee)が設けられ、同委員会は2021年から2022年にかけてこの事件に関してテレビ中継のある公聴会を10回に渡っておこない(この公聴会の様子はYoutubeチャンネル“January 6th Committee”, https://www.youtube.com/@January6thCmteにまとめられている)、2022年12月にその調査報告書“FINAL REPORT Select Committee to Investigate the January 6th Attack on the United States Capitol”, https://www.govinfo.gov/content/pkg/GPO-J6-REPORT/pdf/GPO-J6-REPORT.pdfを公開。2023年1月に解散した。
[40] アメリカでは2020年にAAPI Equity Alliance, Chinese for Affirmative Action (CAA), サンフランシスコ州立大学のAsian American Studies Department (AAS) の三団体によってアジア系アメリカ人および太平洋諸島民(AAPI)へのヘイトクライム、差別事案に対応するためのNPO“Stop AAPI Hate”が設立され、2021年にはタイ系の老人Wicha Rattanaphakdiがアフリカ系の男性による暴行によって死亡し、ジョージア州アトランタのスパで起きた銃撃事件での中国系の女性2人、韓国系の女性3人が犠牲になるというアジア系アメリカ人が犠牲になった殺害事件の続発を受けて全米にアジア系太平洋諸島系への差別反対を訴える社会運動が広まっていった。
[41] Donald Trumpは第45代合衆国大統領在任時の2019年に職権濫用、議会妨害を理由にまず一度、次に退任後の2021年の国会議事堂襲撃事件の際の扇動を理由に再度「弾劾決議」の対象になっている。いずれも罷免に必要な議員定数の3分の2以上の賛成を得られなかったために退職勧告はなされなかったが、決議自体は賛成が反対を上回っている。また、2025年1月には業務記録改ざんの重罪34件で有罪判決を受けており、大統領選当時には他にも議事堂襲撃、大統領選挙への不正介入などの彼を被告とした複数の刑事裁判が係争中だったが、第47代大統領に就任したため審議中断になっている。
[42] Scott Snyder, Joshua Williamson脚本, Dan Mora, Daniel Sampere作画, “DC All In Special”, 2024, DC Comics
[43] Alex Jaffe, “Absolute Interview: Discovering Fears of Modern Batman”, “DC Comics”, https://www.dc.com/blog/2024/10/11/absolute-interview-discovering-the-fears-of-a-modern-batman
[44] Scott Snyder脚本, Joshua Williamson作画, “DC K.O.”, 2025, DC Comics
[45] Scott Snyder脚本, Nick Dragotta作画, “Absolute Batman”, 2024, DC Comics
[46] Daniel Warren Johnson アメリカのコミック・アーティスト、ライター。2012年にウェブコミックス“Space Mullet”でデビュー後、Dark Horse Comics、Image Comicsなどの中堅コミックブック出版社からクリエイター・オウンド作品を発表し、注目される。2020年代になってDCコミックス、マーベルコミックスなどでのライセンス作品も増えている。
[47] Daniel Warren Johnson, “…I’ll Always Be Proud of You”, “Absolute Batman” Annual.#1, 2025, DC Comics
[48] Immigration and Customs Enforcement United States Department of Homeland Security(米国国土安全保障省)傘下の連邦法執行機関。主に移民法や関税関連の取締をおこなう。2026年1月にミネソタ州でおこなわれた一斉取締では民間人に多数の死傷者を出し、アメリカ合衆国国内では多くの批判を浴びた。
[49] Rich Johnston, “Chuck Dixon Posts Absolute Batman As An Agent Of ICE Fighting Antifa”, “Bleeding Cool News”, 2025, https://bleedingcool.com/comics/chuck-dixon-posts-absolute-batman-as-an-agent-of-ice-fighting-antifa/
[50] Borys Kit, “The publisher reveals sales numbers exclusively with The Hollywood Reporter, including some surprising statistics about ‘Batman.’”, “The Hollywood Reporter”, 2025, https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/batman-absolute-universe-comics-dc-super-year-1236458286/